激安株を狙え#12Photo:PIXTA

新興企業の「小ささ」「少なさ」が指摘される日本経済。岸田政権はスタートアップ支援をうたうが、IPO(新規株式公開)するベンチャー企業が巨大化することはまれだ。資金の出し手が少ないといった構造要因だけではない。特集『激安株を狙え』(全13回)の#12では、ネット証券や投資家がつくり出した、個人投資家を犠牲にした“もうけのカラクリ”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

みずほ証券、IPO価格「安過ぎ」注意
決めづらい価格より重大な問題とは

 公正取引委員会は4月13日、新規株式公開(IPO)する企業の公開価格の決定過程で、優越的地位の乱用につながりかねない行為があったとして、主幹事だったみずほ証券を注意した。

 公取委によると、2020年6月から21年5月にかけて主幹事を務めた2社の価格決定の際、主幹事以外の証券会社の「セカンドオピニオン」や、機関投資家の意見を受け入れなかったとしている。

 ただし公取委の公表文には「直ちに独占禁止法違反と認められるものではないものの、交渉力の強い主幹事により、公開価格が一方的に低く設定されることにつながり、新規上場会社に不当に不利益を与え、公正かつ自由な競争に影響を与えるおそれがある」と書かれており、排除措置命令や警告といった重い行政指導にはならなかった。

 日本のIPO市場は、米国に比べて上場する企業の規模が小さく、買い手は機関投資家ではなく個人投資家が主体のマーケットとなっている。

 初値が公開価格を大きく上回り、その後下落する「初値天井」も長年問題視されてきた。もちろん銘柄にもよるが、IPO株はなぜ、頻繁に初値天井となって下落するなど値動きが不安定なのか――。そこには、インターネット証券とヘッジファンド、そして対面証券の自己売買部門が個人投資家を犠牲にしておカネを稼ぐカラクリがある。

 みずほ証券への“注意”の要因でもある、証券業界のIPO株に対する「値決め」の実態に詳しい市場関係者に取材。またこれとは別に、岸田政権が目指す「スタートアップ支援」の陰に隠れた、株式上場後の不都合な真実についてもお届けしよう。