一方、現在の月間支出は17万2000円ですが、(2)の場合はURの賃料が加わります。好条件の物件が見つかるかは分からないので、今回はやや厳しめに試算し、転居後の家賃を上限の月12万円とします。

 両者を合計した、転居後の月間支出は29万2000円。年間支出は350万4000円です。

 ただ実際は、これに加えて「臨時支出」が発生する可能性もあるはずです。

 具体的には、離婚後もお孫さんにお小遣いをあげることもあるでしょう。Kさんご自身が、趣味や旅行など好きなことを始めるかもしれません。

 その資金を多めに見積もって年間30万円とすれば、年間支出は380万4000円です。

 そうすると、年収が150万円、年間支出が380万4000円ですので、毎年の赤字額は230万4000円です。

 Kさんが現在保有する貯蓄は3000万円。離婚によって得られる財産が1000万円の予定なので、合計4000万円です。

 確かに金額の規模は大きいですが、そこから毎年230万4000円を取り崩していくと、約17.4年後(Kさんが82歳頃)に底を突きます。この水準では、人生100年時代に対応できません。

公的年金は早めに受け取った方が
老後の家計も安泰!?

 それでは、公的年金を受け取ったら家計収支はどう変わるでしょうか。

 相談文によると、Kさんの公的年金の受給額は月8万5000円、年間では102万円です(便宜上、繰り下げによる増額は考慮しません)。

 ですが、この金額をそのまま受け取れるわけではありません。年収が増える分、健康保険料や介護保険料の負担も増えてしまいます。

 その増加額を月1万円・年間12万円とすれば、公的年金の手取り額は月7万5000円・年間90万円程度だと考えられます。

 この金額(90万円)を加味し、年収が150万円から240万円に増えると、年間赤字額は前述の230万4000円から140万4000円に減少します。

 ただし、4000万円の金融資産から毎年140万4000円を取り崩すと、28.5年後(Kさんが93歳頃)までは持ちこたえられますが、やはり人生100年には対応できません。

 このことを踏まえると、もし(2)のケースを実行する場合は、公的年金に加えて勤労収入も必要です。パートかアルバイトで良いので収入を得ましょう。

 たとえば月5万円・年間60万円のパート収入を得た場合、収入が増えるため健康保険料と介護保険料も増えますが、年間で55万円前後の収入増が見込めるでしょう。

 収入は240万円から295万円に増えるため、赤字額は140万4000円から55万円減少して85万4000円になります。

 とはいえ、パートも「生涯現役」というわけにはいかないため、働くのは75歳までの10年間のみとします。