子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
子どもを大人の集まりに連れていく
少し前は、日本でも世代を超えた交流がごくあたりまえに行なわれていました。
家族総出で農作業をしたり、子どもが兄弟姉妹の世話をしたり、大人がどこに行くにも子どもを連れて歩く、という光景がどこでも見られました。
しかし、今は少子化により人間関係は希薄になり、都市化により地域社会とのつながりは薄れ、情報化によって人と会わなくてもたいていのことができる世の中になりました。
子どもが幅広い人たちと関わるチャンスがなくなってしまったのです。
ですから、子どもが人間関係を広げられるように親が場をつくらないとなりません。
もっと大人の活動に子どもを参加させましょう。町内会の仕事、ゴミ収集所の清掃、町内の美化活動、お祭りやイベントの手伝いなどに子どもを連れていき、地域の人と関わる機会を持たせてあげましょう。
子どもが手伝いをしていると、「◯◯ちゃんはえらいね」「◯◯くんがんばっているね」と周囲の大人が声をかけてくれます。
大人との対話が子どものコミュニケーション力を伸ばし、自信を大きくしてくれます。
さらに、子ども会、学童保育、スポーツ少年団、児童センター、少年自然の家など、年齢の異なる子どもが集まる場にも参加させましょう。
上下関係が何かとうるさい日本社会ですが、まだ小学生のうちは学年を超えて交流することができます。
引きこもりの原因のほとんどは「人間関係」
アメリカには、年上の子が年下の子の世話をする「Big Brothers, Big Sisters」や学校で下級生の面倒を見る「Buddy System」と呼ばれるプログラムがあります。
子どもが年齢を超えた幅広い交流をする機会を学校や地域社会がつくってあげることで、子どもの非行、不登校、学力不振などの問題を避けることができるのです。
年下の世話をしたり、話し相手になったり、勉強を教えたり、人付き合いのアドバイスをしたり、年齢を超えたコミュニケーションをとる経験は、世話をする側にも、世話をされる側にもメリットが大きいことを知りましょう。
なお、2023年の内閣府の調査によると、引きこもりの人口は約146万人。コロナ禍の影響があった数字とはいえ、これが日本社会の現実です。
引きこもりの原因は「人間関係がうまくいかない」「不登校になった」「就職活動がうまくいかない」「大学になじめない」「職場になじめない」など、人と関わる力の弱さに起因するものがほとんどです。
家庭でコミュニケーションスキルを教えると同時に、世代を超えてさまざまな人たちと交流する機会をつくってあげることが大切です。