子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

勉強以外の習い事が「子どもの選択肢」を広げる

 日本では「文武両道」という言葉はもはや死語になりつつありますが、欧米ではスポーツ、音楽などの課外活動に真剣に取り組んでいる子どもほど「Well Rounded Person/均整のとれた人」に育つという考え方があります。

 ハリウッドで活躍する俳優のマシ・オカさんは『HEROES/ヒーローズ』というドラマで準主役(時を止める超能力を持ち、「ヤッター!」が決めゼリフのサラリーマン)を演じ、その名を世界で知られるようになりました。

 日本では「英語と日本語を流暢に操るバイリンガル役者」として知られていると思いますが、実は本職はコンピューターエンジニアなのです。

 マシ・オカさんは幼少期に母親とアメリカに移住し、名門のブラウン大学に入学(ハーバード大学にも合格しましたが辞退)。

 そこでコンピューターサイエンス(プログラミング)を学びます。12歳の時には「アジア系アメリカ人の卓越した頭脳」という『タイム』誌の特集で表紙を飾るほどの秀才でした。

 ただ彼は専門の勉強だけでなく、日本語、英語に加えてスペイン語とフランス語も話すマルチリンガル。剣道は有段者。

 大学時代はアカペラグループでボイスパーカッションを担当するなど、勉強以外の分野でもさまざまな武器を身につけてきたのです。

 その結果、「右脳と左脳の両方を使うことで人間の可能性を追求する」といって、役者の世界に足を踏み入れました。培ってきたさまざまな武器を融合させることで、芸能の世界で活躍しています。

 このように勉強以外の習い事は、子どもの社会性や精神面の発達を促し、将来的にも選択肢の幅を広げることにもなるのです。

チームスポーツが特におすすめな理由

 私が住んでいるアメリカの場合、まずは地域の「チームスポーツ」に子どもを入れます。

 技術は二の次で、どんどん試合に参加させて、真剣に競い合うことのおもしろさを体験させるのです。

 週末になると、あちこちのグラウンドで子どもたちが汗まみれになって試合をしている姿を見ることができます。

 特にチームで行なうスポーツの場合には、コツコツ努力する根気強さ、失敗を恐れずチャレンジする精神、仲間と助け合う心、最後まであきらめない忍耐力、プレッシャーに負けない精神力、チームの一員としての責任感、コーチやサポートしてくれる人たちへの感謝の心や尊敬の心などを得ることができます。

 これらの精神は、世界の企業が求めるリーダー像そのものです。

 スポーツは子どもの自信を育て、助け合いの精神を育て、リーダーシップを育成してくれる。だから子どものスポーツ参加が重視されるのです。

 実際、私が見てきたケースでも、勉強と並行してスポーツを真剣に続けてきた子どもには「粘り強さ」「立ち直る力」が身についています。

 少々の挫折や失敗を経験しても、気を取り直して再び努力を継続していくことができるのです。