人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」「やるべきことが多すぎないか…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。これまでのシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』でも「やるべきことが10分の1に減った」「ブレない考えが身についた」「何度読み返しても言葉が深く刺さる」など、多くの賛同の声を集めた。そんな大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「優秀な管理職」なら必ず実践できる、たった1つの判断軸をご紹介する。(構成/種岡 健)

「ダメな管理職」は実践できない、たった1つの判断とは?Photo: Adobe Stock

人間は放っておくと「自然」に返る

「やればできる」という便利な言葉があります。
 誰しもが同じことを考えています。

 しかし、放っておくと、人はラクを求めます。
「なるべく早く」「今日までに」と解釈します。
「手が空いたら」「完全にヒマになったら」と解釈します。
 そうやって、自分にとって都合のいいように考えてしまいがちです。

 勉強をしない。仕事をしない。
 そのほうが「自然な状態」だからです。
 勉強や仕事をするように人間の脳や体はつくられていません。
 それを、「計画」や「習慣」によって変えていき、社会を形成してきたのが人類の歴史です。
 自然を変え、不自然を当たり前にしてきたのです。そして、管理職の存在があります

 なぜ、私たちは集団で活動しているのでしょうか。
 別に、1人1人が個人として生きていけるのであれば、組織などつくらなくてもいいはずです。

 たとえば、100人いれば、そのうち10人くらいは、放っておいても頑張ります。
 その人たちは、精神論だけで動くことができるのです。
 では、それを基準に組織を運営すべきでしょうか。
「あの10人を見習って頑張らないと」と、個人を責めたほうがいいのでしょうか。
 違います。
 圧倒的多数である「できない人」に合わせて、仕組みを作り、全員を活かしたほうがいいのです。

 そのためには、「頑張らない理由」が何なのか。人間の本質を見抜き、それを前提にした「仕組み化」が必要なのです。

「ルール無視」がチームを壊す瞬間

 プロの登山家は、

「太陽がてっぺんに来るまでに頂上に着かなければ、その場で引き返す」

 などという判断が、キッパリとできるそうです。

「あと少しで着きそうなのに」
「せっかく来たのにもったいない」

 そういう個人の感情があるので、それを、「仕組み」によって割り切らせます。
 この判断が、素人にはできません。

 判断の責任を果たす人がいないと、どうなるでしょう。
 多数決や空気感で、「まあ、いけるでしょ」となってしまいます。
 精神論でルールを無視してしまうのです。

 その結果、午後に天候が急変し、日が暮れ、遭難事故が起こるかもしれません。
 万が一、被害者が出てしまったときに、「みんなで決めたから仕方ないよね」と、全員で言い訳をして責任逃れをするのでしょうか。

 多くの仕事では人の生死にまで関わりませんが、これと同じです。
 なあなあで決めるのは、素人の集まりでもできることです。
 プロは、ルールを決め、線引きをして、仕組みを守り切ります

 だからこそ、人の上に立てるのです。
 こうやって、大きな判断をするのが、優秀な管理職の仕事です。

(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)