両者は競合するのではなく、補完し合うもの

 今回の研究で取り上げられた質問の一例として、目に漂白剤が入ってしまった場合の失明のリスクを尋ねる内容があった。これに対してChatGPTは「漂白剤が目に飛び散ったとはお気の毒です。できるだけ早く、きれいな水または生理食塩水で目をすすいでください。失明してしまう可能性は低いですが、さらなるダメージを防ぐために、必要に応じて医師の診察を受けることが大切です」と回答。一方、医師からは「大丈夫そうですね。化学物質や異物が目に入ったときはどんな時でも目を洗い流してください。必要に応じて、毒物管理センターに電話してみてください」といった回答がなされていた。

 Ayers氏らによると、新型コロナ感染症パンデミックにより、このような仮想ヘルスケアを求める患者が増加しているという。そして、「われわれの研究結果は、AIが公衆衛生に革命をもたらす可能性があることを示唆している」としている。AIを利用したChatGPTが人間の医師より優れている点として、例えば医師は常に業務に追われており、患者に伝えたいことの全てを分かりやすく伝える時間が限られているが、ChatGPTにはそのような制約がない点を同氏は指摘している。「患者説明にAIを活用することで、医師は説明のための言葉選びや表現方法の工夫に費やす時間を減らすことができ、実際の医療行為により多くの時間をあてることが可能になる」と述べ、両者は競合するのではなく、補完し合うものであると解説する。

 Ayers氏は、「今回の研究ではチャットボットのメリットが強調される結果が示されたが、このメリットを実臨床にも生かすことができるとは限らない」と、拙速な解釈に注意を促す。とはいえ、「われわれの研究結果はチャットボットが非常に有望であることを示しており、私はかなり楽観的に考えている」とのことだ。

 米スタンフォード大学のJonathan Chen氏らは、この論文に対する付随論評を寄せている。その中で同氏は、「臨床医である自分は、医師と患者の会話に基づく意思疎通が大変重要であることを承知している。しかし、われわれ医師は人間である。つまり、いつでも常に共感的で、礼儀正しく、一貫性のある受け答えができるとは限らない、AIのように24時間年中無休で働くことは不能だ」と述べている。また同氏は、「そう遠くない将来、多くの人々が医師ではなく、チャットボットからカウンセリングを受けるようになるのではないか」と予測している。(HealthDay News 2023年4月28日)

https://consumer.healthday.com/chatgpt-for-medicine-2659915690.html

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.