優秀な上司が部下に評価を告げる際に伝えていたこと

それは、低評価を告げる前に

「あなたの人間性とは関係ないですよ、あくまで仕事の評価に過ぎないですよ」

と告げることだという。

多くの人は、低評価をもらうと、「自分の人間としての価値」と「働きぶりの評価」を混同してしまう。

あくまで「この1年」はたいして成果を出せなかったと言われているのにすぎないのだが、「お前の存在価値はない」と言われたように感じてしまう人は多いのだ

だから感情が昂って、「できなかった理由」を必死で探そうとする。

存在を否定されてはたまらない。

就職活動で、いわゆる「お祈りメール」がたくさん届き、同じ気持ちになったことがある人も少なくないだろう。

だからこそ、相手に対し、人間性と仕事の評価は別であると強調する必要があるのだ。

「仕事の評価」と「人間としての価値」は別。

それ以来、

「あくまでも、この評価は直近1年の、仕事の成果に関するもので、あなたの人間性や、考え方を否定するものではないです」

と前置きしてから、低評価を告げるようにした。

すると反応が大きく変わる人がいた。

反省し、素直にアドバイスを求める人も出てくるようになった。

評価がやりやすくなり、面談もポジティブなものが増えた。

確かにこの方法は奏功したのである。確かな手応えがあった。

「人間の価値」と「働きぶりの評価」の違いを明確にすることで、人としての自分が守られていると感じてもらうこと。

不満は「人としての自分の存在を否定された」というところから起きる動物的な自己防衛本能から来るのかもしれない。

そうした人間の本質を見抜いた言葉こそが必要だったのだ。

「仕事の評価」と「人間としての価値」は別。

当たり前のことなのだが、それを告げるのと、告げないのとでは、大きく人間の反応は異なる。

当然、仕事ができないからといって、彼らへの配慮が不要になるわけではない。

最低限のプライドが維持できるよう、つまり動物的本能としても安心していられるよう、言葉遣いに気を配るのも上司の役割、ということなのだろう。

(本原稿は、頭のいい人が話す前に考えていることの著者安達裕哉氏による書き下ろしです)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。