銃を抜くのは最後の最後
警察官の発砲に高いハードル

 警察官が襲撃される事件は、各地でたびたび発生している。2019年6月には大阪府吹田市の交番で巡査が男に刺され一時、意識不明の重体になった。同年1月には富山市の駐在所で巡査部長が大学生の男に刃物やハンマーで襲われ軽傷を負った。

 18年9月には仙台市の交番で、包丁を持った男に巡査長が刺され死亡。同年6月にも富山市の交番で警部補が刃物で刺され死亡した。

 いずれも現場は交番や駐在所で不意打ちを食った格好だが、今回は凶器を持った人物がいると認識して急行した現場で襲われたというのが異例だ。2人は防弾チョッキを着用していなかったが、110番の内容が「刺した」で、銃に対する備えがなかったのはやむを得なかった側面はある。

 しかし殺人、もしくは殺人未遂事件である可能性が高い現場で、銃を抜く間もなく襲われたのは、日本の警察官に「銃を抜くのは最後の最後」という意識があるのは間違いない。もちろん射撃訓練は積んでいるが、日本では拳銃を発射することなく引退する警察官が圧倒的多数であることはご承知の通りだ。

 市民の生命に危険が及びかねない緊迫した状況で、やむにやまれず臨場した警察官が発砲した場合でも、所轄の副署長ら幹部がわざわざ「拳銃の使用は適正な対応だった」などとコメントを出すぐらい、発砲に対するハードルは高い。