現場に向かう警察官の
命をどう守るべきか

 よく刑事ドラマなどで犯人に向かって「刃物を捨てないと撃つぞ」と警告するシーンを目にするが、警察法施行令第13条の「警察官拳銃警棒等使用及び取扱い規範」第2章「使用等」には決まり事が細かく定められていて、問答無用で発砲することはできないのだ。

 緊急性や状況に応じて、第4条「あらかじめ拳銃を取り出しておくことができる場合」、第5条「拳銃を構えることができる場合」、第6条「拳銃を撃つ場合の予告」、第7条「威嚇射撃等をすることができる場合」、第8条「相手に向けて拳銃を撃つことができる場合」、第9条「部隊組織及び複数により行動する場合」といった具合だ。

 また第2条には具体的にどんな事件ならば拳銃を使用することが可能か定めているが、今回の事件は現場に臨場する段階では、何条に該当する事態なのか判然としていなかった。容疑者が猟銃を所持していることが分かっていたならば第4条に該当していた可能性もあるが、それでも今回の悲劇は不可避だっただろう。

 理由は前述の通り、日本の法律では警察官が問答無用で発砲できないからだ。「銃を捨てろ」と警告しても、今回のケースでは青木容疑者は問答無用で撃ってきたに違いない。容疑者に向けて発砲しても正当防衛が成立する可能性も考えられるが、そもそもそうした前例は見当たらない。

 状況から、警察官2人が射殺されたのは避けられなかった今回の事件。せめて国会で取り上げ、第2条に定めている事件に臨場する警察官が発砲したとしても「警察法違反には問わない」「相手が凶器を手にしていた場合は正当防衛を適用する」と保証してほしい。それが現場に向かう警察官の安心につながるし、殉職された2人への弔いになるはずだ。