「サステナブルツーリズム」の
実現を目指す

 社会全体で「サステナビリティ(持続可能性)」への意識が高まっています。観光旅行業界でも、近年注目されているのが「サステナブルツーリズム」です。これは地域における「経済」「社会・文化」「環境」の3つの観点を共存させつつ旅行者を迎え入れる、旅の在り方を指します。

  地域の観光を盛り上げることは、「地方創生」につながるとも考えられています。旅行者・観光事業者・地域住民の「三方よし」を循環させることが理想といえるでしょう。

旅行復活の観光地、魅力発信を支える都市部の「副業者」出所:リクルートじゃらんリサーチセンター「とーりまかし」vol.68
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2022/05/Vol68-X4_all.pdf

「経済」の観点では、たとえば、宿泊価格を不当に下げるのではなく、適正価格に設定(レベニューマネジメント)し、施設運営を継続できるようにすることが、地域の持続可能性につながります。そのためには、運営の効率化も必要です。

 一方、旅行者がその地域に「独自性のある魅力」を感じ、「何度も行きたくなる場所」になることが重要。その地域が持つ魅力を見出し、磨き込み、より良いおもてなしをすることで、集客につながるでしょう。

地域の魅力の発見・発信に
「地域外人材」が活躍

 観光客誘致による地方創生を目指す地域にとっては、多様化する個人の嗜好に合わせ、独自の魅力を打ち出すことが課題となっています。しかし、その取り組みを進める際に、地域で生まれ育った人だけでは「当たり前」と捉え、外部から見た魅力に気付けない場合もあります。

 そこで、地域の魅力を見いだして発信する活動に、「地域外の人材」が活躍する動きが見られます。リクルートが運営する「サンカク」では、「ふるさと副業」プロジェクトを展開しています。

「ふるさと副業」とは、都市部で働く人々が、地方企業で副業・兼業すること。コロナ禍を機にリモートワーク環境が整ったことから、オンラインで「ふるさと副業」に従事する人が増えています。地方企業にとっては、地元では採用が難しい人材を、副業という形で登用することができるメリットがあります。

「ふるさと副業」プロジェクトにおける、地方企業と都市部の人材マッチングの一例をご紹介しましょう。

 和歌山県田辺市の「SEN.RETREAT TAKAHARA」は、空き家をリノベーションした宿泊施設を運営しています。SNS 運用のクオリティアップ、イベントの企画、ECなどの新規事業を推進したいものの、地元ではそれらのスキルを持つ人材の確保は難しい状況。そこで、「ふるさと副業」の人材を活用しようと考えました。

 副業者として採用したのは東京在住の30代の方など4名。IT企業でSNSマーケティングに従事している方、アパレル企業でデジタルマーケティングに従事している方などです。

旅行復活の観光地、魅力発信を支える都市部の「副業者」

 こうした「ふるさと副業者」が、その地域の人々が気付いていない魅力を引き出し、マーケティングノウハウやデジタル知識を活用してプロモーションを支援。「SNSのフォロワー数が倍増」という効果を生み出しました。さらには、学生インターンも巻き込み、発信の仕組み化も実現しています。

 宿泊施設運営者は、副業者にこうした業務をお任せできることで、他に注力したいサービスや事業に集中できるようになっているようです。