宿泊施設の「DX」により
人員不足を解消へ
旅行需要が高まり、宿泊施設にとっては業績を回復させるチャンス。しかし、人員不足のため、予約受付を制限しなければならない施設が多数あります。コロナ禍で多くの人が離職しましたが、欠員補充が追い付かない状況。新規採用の難易度も上がっています。
人員不足を解消するため、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みも進められています。たとえば宿泊施設では、電話での予約受付をホームページ予約にシフトすることで、予約対応スタッフの削減、対応時間の短縮につなげている事例があります。
また、「口頭・手書き」で行っていたスタッフ間連携にデジタルツールを導入することで、運営を効率化。ミスやトラブルを減らすほか、スタッフに余裕ができた分、接客サービスに集中しやすくなる効果を生んでいます。
こうしたDX推進においても、「ふるさと副業者」の活躍が期待できそうです。
なお、「ふるさと副業」に従事する方々からは、次のような声が聞こえてきます。
「自身の経験・スキルを生かし、故郷や好きな土地に貢献したい」
「地方創生に興味があり、自身の経験・スキルを生かして課題解決を支援したい」
「実務経験が浅くても、人材が少ない地方では喜んでもらえることも。地方企業での副業を通じ、実務スキルを磨きたい」
このように地域外人材やDXなど新たな力を活かすことで、おもてなしを洗練させ、「ありがとう」の数を増やしていく。すると、観光・宿泊業の働き手が大事にしている「旅行者の喜び」を感じられる機会が増え、働く人材の定着にもつながっていきます。ES(従業員満足度)がCS(顧客満足度)につながり、それによって業績が向上することで、観光が持続可能なものになっていきます。
また、地域の観光・宿泊業は「グローカル」=「グローバル(世界規模で通用する)+ローカル(地域に根差す)」な産業です。今後、インバウンドも増えていくため、グローバル視点・水準が学べることも、この産業にかかわる価値の一つといえるのではないでしょうか。
(リクルート ジョブズリサーチセンター センター長 宇佐川 邦子、リクルート じゃらんリサーチセンター 主席研究員 森戸 香奈子)