JR東海が京都キャンペーンで
「仏像」を前面に打ち出した理由
これを両立させるため、京都市は2018年頃から本格的にオーバーツーリズム対策に乗り出したが、期せずして訪れたコロナというインターバルで取り組みを加速させた。何といっても必要なのは旅行者の分散だ。京都は清水寺や金閣寺、伏見稲荷といった定番観光スポットがあり、春・秋の人気シーズンにさらに集中する。
人気があるものを「見るな」とは言えないが、比較的混雑していない季節、曜日、時間帯などを発信する取り組みや、多様なエリアの魅力ある「隠れた名所」を積極的に発信するなど、訪問先の分散を図りつつ、新たな観光資源を開発する取り組みが進められた。
今回、JR東海のキャンペーンについても、これまでは最も人気のある春の桜、秋の紅葉のシーズンを打ち出すことが多かったが、混雑の分散を図るためにオフシーズンとされる5月から夏頃まで、季節に関係ない「仏像」を打ち出すことにしたそうだ。
またオーバーツーリズムの象徴として、しばしば取り上げられるのが京都市バスの混雑問題だ。京都~銀閣寺ルートの最混雑時間帯はコロナ前、1台当たり平均140人以上が乗車、混雑率でいえば200%以上というバスではありえない数値に達していたといい、地元住民が利用できないといった声が多く寄せられてきた。
そこで京都市は、今年中に700円乗り放題の「バス1日券」を廃止し、1100円の「地下鉄・バス1日券」へシフトを図る。バスを不便にすることで解消するのは交通事業者としては望ましい選択肢ではないが、運転手の担い手不足も深刻化する中で、俯瞰(ふかん)的、総合的観点から解決していかなければならないだろう。
来年春までには、訪日外客数がコロナ前の水準を回復するとの予測もある。コロナという雌伏の時を乗り越えて生まれ変わった京都の姿を示せるのか、あるいは元の木阿弥(もくあみ)に戻ってしまうのかに注目したい。