先ほど「営業情報の線引きには二つある」と言いました。法律上の線引きと、外部からの評価に関わる線引きです。ここからは後者も含めて、頭の中の営業情報をどうしたらいいのかお話ししましょう。

頭の中に入った機密情報は
どう扱えばいいのか

 ふたたび、私個人の例から紹介します。先月『ドコモと三菱UFJがエグい値上げ決行!』という記事(https://diamond.jp/articles/-/322757)を書きました。この記事の元になったアイデアは30年以上前にコンサルファームで教えてもらった営業情報です。

 新人コンサルはファームの中でたくさんのトレーニングを受けます。ATMの戦略はその初期トレーニングでたたき込まれた話のひとつです。ポイントだけ紹介すると、銀行の事業戦略上、ATMで金融業務をこなしたほうが、銀行窓口で同じ業務をこなすよりもコストが低くなるのです。これを当時の都市銀行は、精密にどれくらい安くなるのかをきちんと計算していました。

 その結果、「振り込みは手数料を大幅に値引いても、ATMで処理した方が安い」といった競争上重要な知見が生まれます。

 銀行にとっての問題は「では、どうすれば利用客が窓口ではなくATMを利用するように促せるのか?」で、それに対する答えは「窓口を利用した場合の手数料がびっくりするほど高ければいい」というものでした。結果、1980年代当時から銀行窓口の手数料はATMよりも200円高かったりしたわけです。

 そのコンセプト部分を、新人コンサルのトレーニングでたたき込みます。理由は「他業界であってもこの考え方は有効だから」です。

 実際にそうかどうかはわかりませんが、仮にドコモがコンサルに依頼して「ドコモショップの窓口の利用者はコストがかかるので、なるべく顧客がウェブ上で手続きするように促したい」と頼んだ場合、高い確率でコンサルが提示する解決策は「だったら、ドコモショップの利用料をびっくりするほど値上げしてみましょう」になります。

 おそらくこのノウハウは、多くのコンサルファームで常識のように活用されています。では、そのような大切なノウハウを私がダイヤモンド・オンラインの記事で開示してしまっていいのでしょうか? 実はいいのです。