筆者なりの定義
──「定義=わかりやすくてシンプルな説明」ではない

 先人たちのマーケティング定義を例に取りながら、それらを検証してきました。残念ながら、こういう定義であるならば、読者のみなさんの記憶に残っていないのも無理はないかもしれません。覚えたところで、とくになにも意味がないからです。

 ですが、人様の定義にケチをつける「後出しジャンケン」は簡単です。最後に筆者なりの定義をご紹介することにしましょう。

【定義】
マーケティングとは「一定費用の下で、適切な買い手群にとってよりコストパフォーマンス(CP)の高い商品を生み出し、その存在を認知させ、その内容を理解させ、これを送り届けることによって、粗利を最大化する総合活動」である。

 さて、上記の定義を読んでみて、どう感じましたか?「なんだか長くてわかりづらい」とか「シンプルじゃないから定義っぽくない」とかいう声が聞こえてきそうです。定義を単に「ある言葉を短くシンプルに解説したセンテンス」だと思っている人からすれば、それも無理はありません。

 しかし、われわれがマーケティングの定義を追究しているのは、そういう「わかりやすい説明」がほしいからではありません。より質の高い行動を選択できるようになるためには、より多くの行動案を発想することが必要で、そのための土台になるような定義を探しているのです。上記の定義は、そうした観点から吟味しながら、筆者がみずからつくってみたものです。

 次回以降では、筆者がこの定義にたどり着くに至るまでの思考をご紹介したいと思います。