仕事においては、時に言いにくいことを伝えなければならない場合があります。どう伝えればカドが立たず、かつすんなり聞き入れてもらえるだろう…と悩む人が多いのではないでしょうか。そんなとき「伝え方の技術」を使えば、スムーズに事が運ぶようになります。
シリーズ累計156万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者である佐々木圭一さんに、聞き入れてもらいにくいこともスムーズに通せる「伝え方のコツ」を教えてもらいました。(構成/伊藤理子 撮影/石郷友仁、小原孝博)

【絶対NG!】上司や部下への「お願い」で使ってはいけない言葉【ワースト1】Photo: Adobe Stock

■Case1:出社要請が出たが、在宅勤務を続けたい

 先日、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザなどと同等の「5類」になり、マスクをする、しないは個人の判断に任されることになりました。それに伴い、在宅勤務からオフィスへの出勤に切り替える企業が増えつつあります。中には、部署ごとで在宅勤務か出社かを判断させる企業もあるようです。

 一報、コロナ禍のこの3年で「在宅勤務でも十分成果を出せる」ことに気づいた人は多いと思います。満員電車のストレスがない、通勤時間が削減できるなど、より効率的でイキイキ働けるようになった…と実感している人も相当数に上るのではないでしょうか。

 上司からオフィスへの出勤を要請されたものの、毎日の通勤はどうしても耐え難い…という場合、ストレートに「在宅勤務を認めてください!」と伝えたくもなりますが、いったん部署として「原則出勤」を決めた以上、そう簡単に覆るとは思えません。

 こんなとき、伝え方次第でイエスの確率を高めることができます。例えば、次のように伝えてみましょう。

「通勤にかかる2時間で、企画書を1本書くことができます。これまでより質も量もアップさせられるよう頑張るので、在宅勤務を認めてください」

 これは、伝え方の技術「相手の好きなこと」を使った伝え方です。上司からすれば、いつもより企画書の量と質をアップしてくれるのは嬉しいこと。加えて、在宅勤務にすれば提出される企画書がもう1本増えるというのも、嬉しいことです。

「在宅勤務を認めてほしい!」と自身の要望を伝えるだけでは、部署としての決定を覆すのはまず難しいでしょう。ただ、上司の頭の中を想像して、メリットを感じる伝え方をすれば、「メリットを享受できるならば、もう少し在宅勤務を認めるか」と思ってもらえる可能性が高まります。

 この「相手の好きなこと」は、伝える相手にとてもいい印象を与える伝え方です。印象が良くなるだけでなく、イエスももらいやすくなるので、ぜひ覚えておいてほしい技術です。