独自の育児支援策で
「保育園送迎」の負担を解消
具体的には、流山おおたかの森駅と南流山駅には「送迎保育ステーション」が設置されており、朝に子どもを預けると保育園まで送ってくれる。そして、夕方は再びステーションまで連れて帰ってくれる。
親は毎日、会社の行き帰りに子どもを預け、引き取ることができる。保育園まで直接出向き、送り迎えする必要がない。
利用料は1回100円で、利用に当たって審査と面談をクリアする必要があるが、お迎えのストレスが軽減し、所要時間を短縮できるメリットは大きい。そのため、同サービスに対する親世代からの評価は非常に高い。
さらに、流山市は保育園の数を過去15年間で5倍に増やし、2021年に「待機児童ゼロ」を達成した。
他の市区町村には、「自宅から遠い保育園しか空きがない」といった理由で、実際は保育園に入るのが難しい子がいるにもかかわらず、「待機児童ゼロ」を宣言しているエリアもある。
「市全体の保育園に対する入園希望者の数」のみを計測するなどのカラクリによって、数字上の「待機児童ゼロ」をうたっているわけだが、流山市はそういう手法を駆使しているのではない。真の意味で待機児童がゼロなのだ。
こうした政策は、現市長・井崎義治氏が03年に当選したことで加速した。
井崎氏はまず、04年にマーケティング課を設置し、PR活動を開始。「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」のキャッチコピーを用いた広告を展開した。また、流山おおたかの森駅で年4回、30代~40代をターゲットとしたイベントを開催した。
夏の夜に駅前広場で飲食できるイベントを開催した際には、4日間で5万人強の人が訪れたこともある。その来場者の約4割は市街在住者の子育て世代で、東京都からの転入者は全体の約3割に及ぶ。
筆者がここに記すまでもなく、こうした政策とその成功はかなり知られたところでもあるが、前述した送迎保育ステーションを始める行政はあまりない。筆者はその理由について「行政サービスの呪縛」ではないかと考えている。