他の市区町村が「保育ステーション」を
簡単にまねできない理由

 流山市の面積は35.32平方キロメートルと決して広いとはいえず、主要な駅は限られている。流山おおたかの森駅と南流山駅だけに「送迎保育ステーション」を設置しても、大半の市民がこれらの駅を利用するため「どうして自分の居住エリアには設置されないのか」という不満が出づらい。

 一方で、面積が広かったり、主要駅が分散していたりするエリアでは、ステーションを多数設置しないと「住民が平等に受けられるサービス」にならず、運用が難しくなる。

 流山市の人口増加の起爆剤となったのは「つくばエクスプレス」(TX)の開業なので、その沿線である流山おおたかの森駅と南流山駅はステーションの設置場所として最適であり、行政側も意思決定がしやすかったのかもしれない。

 かつて流山市は、平成の市町村大合併の流れで、隣り合わせの柏市に併合されるうわさが絶えなかった。結果的にそうならなかったことで、充実した保育サービスを実現できているのだから不思議なものだ。

 こうして需要喚起に成功した流山市は、新築マンションの平均価格でも好調さが見られる。同じTXの駅で、柏市にある柏の葉キャンパス駅と比較してみよう。

 この10年で4000万円強の価格で横ばいだった柏の葉キャンパス駅に対して、3500万円前後だった流山おおたかの森駅は今や4500万円ほどに値上がりしている。

 このように近隣の駅を追い抜いた過去の事例は、駅前の大規模再開発があった場合ぐらいしかない。この点においては、柏の葉キャンパス駅は広大な更地から大手デベロッパーが開発したエリアなので、条件面だけでは流山おおたかの森駅が優位とはいえない。

 だが、ここ10年間のマンションの売れ行きと中古物件の価格は、流山おおたかの森駅に軍配が上がる。「流山市に住みたい」という非常に強い需要があるため、マンション価格の逆転劇が起きたのだろう。

 流山市は「持ち家派」だけでなく「賃貸派」からも人気で、家賃も高騰している。同じ部屋が2年間で5~7%値上がりしているのだ。