もしもアマゾンが楽天を買収して
「アマ天」が爆誕したら?
そこで、携帯サービスの話です。2024年にアメリカでアマゾンの携帯サービスが「もしも」成功したとして、2025年にアマゾンが日本でも同様のサービスを展開しようと考えたとします。
ここで、もう一つの「もしも?」が登場します。もしも2025年段階で楽天モバイルのユーザー数が伸びず、三木谷浩史CEOが窮地に陥っていたとしたらどうでしょうか?
私は経済評論家の中では楽天モバイル擁護派で、今は大赤字の楽天モバイルも加入者が1000万人を突破すれば楽天グループ全体はV字回復していくと予想しています。
楽天経済圏のユーザー数は4000万人いるので、1000万人という数字は現実的に到達可能な数字だとも考えています。
一方で、経営状態を考えると楽天にとっては資金調達という現実的な経営課題が重しになっています。膨大な数の基地局を建設してきたことで巨額の借金を背負っているのですが、その借り換えのスケジュールがどんどん迫ってくるのです。
2年後、楽天モバイルが躍進しているか、それとも伸びが止まってしまうのか。「もしも?」悪い方の50%の確率が起きてしまっていたとします。そのときのアマゾンの経営会議を想像してみてください。
「日本の携帯サービスへの参入、どうしようか?」
「それなんですけど、建設に3兆円かかる携帯電話網を持っている日本の会社が1兆円で売られてますよ」
それをアマゾンのアンディ・ジャシーCEOが気づいたら、どう考えるでしょうか?
「うん。ワンクリックでその会社をポチろう」
と言い出すかもしれません。
これは2025年に「アマ天」が誕生するという、競争企業にとっては悪夢のシナリオです。
このアマ天、思いもよらない組み合わせですが、考えてみると悪くはない。少なくとも消費者にとってこれは悪い話ではありません。
楽天モバイルと同じ、3GBまでなら月額1078円、20GBまでなら2178円、それ以上は無制限で3278円の携帯サービスに加入すれば500円分のアマゾンプライムも無料でついてくるとしたらどうでしょう。生活防衛のために他社から乗り換えようという人が、これまで以上に出てくるのではないでしょうか。
楽天の国内EC流通総額は、直近1年分で5.8兆円です。アマゾンは国別売り上げは非公開ですが、調査によれば楽天とアマゾンは国内ではほぼ互角。つまり合併で新たに10兆円小売業が誕生します。
これはイオンやセブンアンドアイと同等規模の巨大流通となります。同時にECやクラウドの規模を考えると、国内最大のビッグデータの保有企業となり、資金規模を考えると国内最大のAI企業の誕生になるでしょう。
そうなると、国内の主要産業の破壊が現実味を帯びてきます。中規模な小売流通は、当然のようにアマ天の巨大な販売力の下で競争力を失うでしょう。2030年までに家電量販店が消え、ホームセンターが凋落し、アパレル業界は衰退します。動画、音楽、書籍といったメディア業界でも、アマ天エフェクトで崩壊スピードは速まります。
それを予感させたからこそ、冒頭のシーンのように「アマゾンがアメリカで携帯サービスに再参入」というニュースを耳にしたとたん、私の頭の中に電気が走ったのです。
さて、アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか?
あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか。