LGBT法案でも
自民党が維新案を“丸のみ”

 注目を集める「LGBTなど性的少数者への理解増進法案」においても、自民党は維新・国民が求めた修正事項を反映することで合意。自民・公明・維新・国民の4党による再修正案が国会に提出され、衆議院内閣委員会で可決された。

 LGBT法案では、トイレ・浴場・更衣室など「女性専用スペース」における女性の安全や権利保護を不安視する声が女性団体などから上がっていた。修正協議では、これに配慮するため、維新案にあった「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意」との文言を盛り込むことが決まった。

 東京都渋谷区や埼玉県などの地方自治体では、すでに独自のLGBT条例の制定が進んでいる。国よりも先に、地方自治体で急進的な条例が制定されている状況を踏まえ、自民党は「ブレーキ的な役目」を持つ文言を法案に盛り込んだとみられる。

 こうした修正を主導する自民党は「政策のデパート」であり、あらゆる分野の政策に手を付けてきた(本連載第305回・P5)。

 今後も国内外から上がる要望に応えて、日本における「マイノリティーの権利保障」を国際的な水準に近づけるための法案が、次々と政治課題に浮上するだろう(第219回)。

 そして、自民党がその際に、党内外の保守派の反対を抑える目的で、維新・国民との政策協議に再び応じる可能性は否定できない。

 いわば、現在は選挙協力を巡って自公の関係がギクシャクしている一方で、自民党が維新・国民との関係性を強めつつある状況だ。昨今は、自民党が連立政権から公明党を外して、維新・国民と連立を組むという「連立入れ替え論」もささやかれている。

 ここで基礎的な話に触れておくと、与党が連立政権を形成する理由の一つは「国会での多数派の確保」である。これまでの日本では、衆参両院の多数派が異なる「ねじれ国会」の運営に苦しむ政権が多かった。そのため歴代政権にとっては、特に参院での多数派確保が重要となった。

 現在も、衆院では単独で「圧倒的多数派」を形成する自民党だが、参院では総定数248議席のうち119議席しか占めていない。そこで過半数を確保するために、公明党の27議席を必要としてきた。

 だが、ここにきて維新・国民が勢力を拡大しつつあり、前者は21議席、後者は13議席を獲得している。理論上は、このどちらと(あるいは両方と)組んでも連立の組み替えが可能となる。それならば、公明党よりも自民党が志向する政策に近い、維新・国民が連立相手としてふさわしいという考え方が浮上しているのだ。

 しかし、筆者は「連立入れ替え論」は現実的ではないと考える。