自民・公明の「連立解消説」が
杞憂といえる理由

 その理由は、与党が連立政権を形成するもう一つの基本的要因である「選挙での協力体制の構築」の問題があるからだ。

 自公連立は1999年10月に発足してから、民主党政権だった3年3カ月を除いても20年以上続いてきた。公明党はその間、支持母体である創価学会の集票力を武器に、さまざまな選挙区の自民党候補に「組織票」を提供するなど協力してきた。

 選挙協力の実態については、つい先日、Webメディア「NEWSポストセブン」が自民党の内部資料を基にスクープ記事を掲載した(NEWSポストセブン『【自民党内部資料スクープ入手】自公亀裂「創価学会票」消滅で自民党議員56人が落選危機に直面』)。

 この記事によれば、21年10月末に行われた「第49回衆議院議員総選挙」において、公明党から推薦を受けた自民党候補は263人(自民党の小選挙区候補総数は279人)。このうち当選者は233人(小選挙区当選180人、比例復活53人)、落選者は30人だったという。

 記事で引用されている内部資料で特に重要なのは、自公選挙協力の効果について詳しく分析した「小選挙区と比例代表の得票差」の項目である。この項目では、小選挙区ごとに「自民党候補の得票」と「比例代表での自民党の得票」を計算しているほか、「得票差」まで算出している。

 その結果、公明党に「3万票以上」を依存したのは53選挙区、「2万票以上」を依存したのは200超の選挙区だったという。

 この記事によると、前回の総選挙で、次点との得票差が2万票未満で当選した自民党議員は56人。自公の協力体制が解消されて公明票が消えれば、これらの議員の多くは当選が難しくなる。

 もちろん、自民党候補が公明党の推薦をもらう代わりに「比例は公明党に」と有権者に呼びかけ、その結果として公明党に投票した自民党支持者もいるだろう。だが少なくとも、公明党が自民党衆院議員の約24%の当落を左右するほど大きな集票力を持っているのは間違いない。

 もし自民党が、公明党から維新・国民に「連立入れ替え」を行うならば、公明党と同等の集票力をどう確保するかが問題となる。「政治家は、選挙に落ちたらタダの人」なのだから、「政策志向の一致」よりも深刻な問題だ。