デリカ スターワゴンをイメージした外観
自然の中で醸し出す、デリカらしい世界観
筆者は同試乗会の最終日午後に参加した。
そこで、三菱広報関係者に、これまで試乗会に参加したメディア関係者の声について聞いてみた。
すると、試乗前には前述のようなデリカミニに対する懐疑的な見方をする人が確かにいたという。その上で、「こうした自然の中で実車を見て、砂利道やオンロードで走りを体験いただくと、多くの方が我々三菱のデリカミニにかける思いを理解してくれた」と指摘する。
では、ここからは筆者のデリカミニ試乗(4WD)の感想を紹介する。
デリカミニには、各グレード(T・Tプレミアム・G・Gプレミアム)それぞれで2WD(前輪駆動車)と4WD(四輪駆動車)がある。
試乗した日は午後から雷雨との予報があったため、事前にキャンプ施設内で屋外展示された各種の外装色やオプション装備を持つデリカミニをじっくり見たり、開発者らとじっくり話をするため、試乗予定開始の時間よりかなり早く現地入りしていた。
そこでまず感じたのは、「デリカの世界観」だ。
改めて、三菱「デリカ」の歴史を振り返ると、1960年代末から70年代にかけて商用車として登場したのが始まりで、80年代には当時のRV(レクリエーショナル・ヴィークル)というカテゴリーで三菱「パジェロ」が人気車となる中で、本格的な四輪駆動のワンボックスカーといった商品イメージで「デリカ スターワゴン」が一世を風靡(ふうび)した。その後、「デリカ スペースギア」、そして「デリカD:5」へと進化し、このカテゴリーで唯一無二の存在であり続けることで、多くのデリカファンを獲得してきた。
そんなデリカの世界観を、デリカミニからもしっかり感じることができるのだ。
ただし、ハードウエアとしてのデリカミニを解析すれば、20年に登場し23年1月に生産中止が明らかになったeKクロススペースに改良を施した商品である。
具体的には、フロントフード(ボンネット)やフェンダーを継承しつつ、フロントマスクを変更するなど、外装に手を加えている。
デザイナーはデリカ スターワゴンのヘリテージ(歴史)を意識したという。デリカD:5の顔のイメージを採用することも検討したが、ボディの縦横比などの関係などで、そうしたデザインの方向性だと量産車として“しっくりこなかった”という。
実際、試乗会現地にデリカD:5も用意されていたが、並べて写真をとると「まったく別のクルマ」に感じる。
結果的に、デリカミニは、デリカが商用車から唯一無二な存在の人気車へと転換したデリカスターワゴンを感じさせることで、より「デリカらしさ」が強調されたといえるだろう。
外からデリカミニを見た上での「デリカらしさ」が、車内に入っても頭の中でのイメージとして継続する。そのため、インテリアとしてはeKクロススペースから大幅な変更はなくても、「いま、デリカに乗っている」という感覚が芽生えるから不思議だ。