当然、その中からヒットするのはわずかです。でも、それでいいんです。世に出してみて評価が芳しくなかった製品は、データだけ得て、すぐに撤退する。おそらくアマゾンが世に出した製品の7、8割は大きなヒットにならず、すぐに消えているかもしれません。

 しかし2、3割でもヒットすれば御の字だと思い挑戦し続けるこの体制はこれからも変わらないでしょう。

 膨大な研究開発費をかけて高性能なハードウェアを1つ生み出すよりも、スピーディーにデバイスを出していくことが今すべき戦略であることを、理解しているからです。

 アップルにも同様の動きが見られます。もともとハードウェアに強い企業ではありますが、ソフトウェアならびにサービスを意識した事業展開を最近は行っていて、定額制まとめサービスのアップルワンやアップルカードはまさにその代表例です。

書影『2025年を制覇する破壊的企業』(SBクリエイティブ)『2025年を制覇する破壊的企業』(SBクリエイティブ)
山本康正 著

 アマゾンまで極端ではありませんが、場合によっては捨て石となるような、より良いデータを獲得するためのデバイスを発売するようなことも、十分あると私は見ています。

 たとえばヘルスケア領域。アップルウォッチが、まずハードウェアとしてあります。ただ技術がこの先進み、家にある何らかのデバイスでバイタルデータが取得できるようになれば、別にアップルウォッチはなくてもいいわけです。

 iPhoneという絶対的なハードウェアを持ってはいますが、アップルのビジョンもコンシューマの生活を向上させることですから、iPhoneに固執することなく、今後もデバイスも含めた、多種多様なサービスを打ち出していくことでしょう。開発中と言われるアップルグラスはまさにその証しとも言えます。