上場企業たるもの無配は恥?
無配の企業が相当数存在することも、日本と欧米との対照的な違いです。
日本には、「上場企業たるもの無配は恥」という考え方が根強くあります。しかし、欧米の企業はそのようには考えません。
株主からの圧力が日本よりはるかに大きいと言われる欧米で、なぜ無配が株主から容認されるのでしょうか。
その理由は、株主に対する経済的還元にはインカム・ゲインとキャピタル・ゲインの2つがあるということから理解できます。
たとえば、ソニー株式会社の2022年3月期の年間配当額は1株につき65円です。1株ではその程度ですが、会社全体としては800億円を超える額になります。1株につき1年で65円もらっても株主としてはそれほどうれしくないかもしれませんが、会社としてはかなりのキャッシュ・アウトになるのです。
そうであるならば、株主の立場としては、「そんな少額の配当はしてくれなくていいから、それをすべて内部留保に回して企業をもっと成長させ、将来の株価で報いてくれ」という発想が出てくるわけです。
この考え方は、特に成長が期待できる企業に対して成り立ちます。高成長が見込める企業は、将来の株価上昇がより期待できるからです。
象徴的なのは、米シリコンバレーの企業です。
たとえば、マイクロソフトは1975年の創業以来、しばらくの間ずっと配当しませんでした。アップルも配当に対しては非常に消極的でした。
「上場企業たるもの無配は恥」というのは、どうも日本的な価値観のようです。シリコンバレーでは真逆の考え方がむしろ普通なのです。