この年表から分かることは、介護が始まってすぐに道具を一式揃えたわけではなく、介護の壁にぶつかって介護保険だけではどうにもならなくなったときや、母の認知症が進行して見守りや介護がさらに必要になったタイミングで新しい道具を追加しています。その都度購入していったため、まとまった出費にはなっていません。もちろんヘルパーなど、介護のプロによるサポートの時間も増えていますが、それでも道具の活用は増えていきました。

 特に認知症が進行すると、自宅での生活は厳しいと考えて介護施設に預けるしかないと家族は判断しがちです。道具の力でどうにか母をサポートできないか、母が望む自宅での生活を実現できないかと考え続けた結果、新しい道具の登場に助けられ、このような道具の年表が完成しました。

介護アイテムの導入は
節約につながる

 親の様子が心配になり、実家へ頻繁に足を運ぶようになると、車のガソリン代や新幹線、飛行機などの交通費が多くかかってしまいます。特に移動距離が長くなると、負担する金額も大きくなります。ある調査結果を用いて、遠距離介護にかかる交通費をシミュレーションしてみたところ、1回にかかる交通費(往復)の平均は、約16000円でした。また86.3%の方が、最低月1回は介護帰省していて、24.5%の方は月5回以上帰省しています。

 わたしも遠距離介護が始まった当初は、交通費だけで10万円を超えた月がありましたが、介護保険サービスの利用や新幹線の割引チケットの購入、見守りカメラを設置して帰省回数を減らした結果、月4万円以下まで抑えられました。見守りカメラの効果だけで、1往復分=月3万円の節約になりました。

 交通費に加え、移動疲れや介護と仕事の両立の大変さなど、長期戦になるかもしれない介護の未来まで考えたとき、帰省頻度を減らしておいたほうが身体的にも経済的にもラクになります。そのためには介護のプロの力を借りるほかにも、できるだけ親が自立できる環境を整えたり、駆けつけなくても見守りや声かけができる道具を使ったりするなどの工夫が必要です。もし、介護する側が過労で先に倒れてしまったら、困るのは親のほうなのです。

 同居で介護している人や近距離で通いの介護をしている人も、自分の仕事や家族の都合、あるいは病気などで介護できない場合に備えて、自分自身が不在でも介護が回る態勢作りを目指しましょう。