個性派カフェが人気の理由は
「友達を誘う口実になるから」
答えを先に述べると、その理由は「“本物の友達”を誘う口実になるから」です。
というのも、どうやら日本の若者たちは今、特に目的や行きたいお店がないまま「今日空いてる?遊ぼうよ」などと気軽に友人を誘うことに抵抗があるようです。仲間が別の予定やアルバイトなどを優先した場合に、断られて傷つくリスクが伴うからです。
一方で「『店員が友達』というコンセプトのカフェに行かない?」という誘い方をすると、どうでしょうか。相手が「何それ?」「どういうこと?」と興味を持ち、誘いに乗ってくれる確率が高まるはずですよね。
いわば、若者はこのカフェを誘い文句に盛り込むことで、無下に断られて傷つくリスクを減らしていたのです。「友達キャラを演じている店員と話してみたい」「店内の様子をSNSに載せたい」という直接的な理由だけではなく、こうした人間関係における繊細な心理が、実はお店の流行に一役買っていたのは興味深い現象だといえます。
筆者の見立てでは、若者たちがこれほどまでに「傷つきたくない」と考える理由は、SNSの普及と密接に関係しています。
筆者が若いころを含めて、SNSが台頭する前は、世の中の若者たちには「常に人に見られている」という感覚はありませんでした。ですが現在は、日頃の行動からLINEのやりとりに至るまで、ほぼ全てが人に見られており、SNSのネタにされる危険性をはらんでいます。
友達を遊びに誘って、あっさり断られる様子を誰かに目撃されると、そのことをちゃかしてSNSに書かれるかもしれません。乗り気ではない仲間をLINEで誘った結果、その文面をスクリーンショットに撮って晒(さら)される可能性もゼロではありません。
そうした怖さがあるからこそ、「店員がフレンドリーすぎる」というコンセプトの面白さをフックにして、友人が誘いに乗りやすい状況を「お膳立て」してくれるカフェに若者が注目したといえます。
そして、この「お膳立て」は「友達がやってるカフェ」だけにとどまらず、若者向けのビジネスにおいて重要なポイントになりつつあります。