聞き入れなかった社長、「守りの時期」の失敗とは
筆者の経験では、現役社員から現場の不正などがマスコミにリークされる企業は、現在の経営陣や体制に不満を抱えている社内勢力が「暗躍」していることが圧倒的に多い。不満を抱えている人たちは、とにかく経営陣を引きずり下ろしたいので、常に攻撃材料を探している。だから以前から続いている不正、パワハラ、悪しき伝統などを積極的にリークする。
こういう「守り」の時期、経営陣は会見やインタビューで攻めた発言をすると危ない。その後で、反対勢力のリークによって、それが「虚偽の発言」などにされてしまう恐れがあるからだ。
筆者はこのようなリスクを同社の幹部に説明をして、社長としては不本意かもしれないが、インタビューは不正の話題を避けた方がいい旨をお伝えした。
しかし、残念ながらそれが聞き入れられることはなかった。
社長はこの不正が、一部の現場社員が独断でやっていたことで組織的なものではないことを強調して、二度とこのようなことは起きないと宣言をした。
「これはまずいな」と思っていた矢先、マスコミで再び不正疑惑が報道された。こちらも組織内でずっと続いている不正であって、前回の再発防止策はまったく効果がない、と現役社員が匿名で告発をしていた。当然、「うそをついた社長」は謝罪会見で叩かれて、しばらくして一線を引いた。
細かな点は違うが、似たようなパターンで事態を悪化させる不祥事企業は非常に多い。やらなくていい会見を開く。答えなくていいことを答えてしまう。言わなくていいことまでぶっちゃける。その余計な一手で、受けなくていい批判や攻撃を招いてしまうのだ。