ただし、これらはATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)など、列車との衝突を防ぐ信号保安装置とは独立したシステムなので、異なる線路に進入しても、その先に列車がいれば赤信号で停止する。

 誤った線路に進入したと聞けば、重大な事故につながりかねない事態だったのではないかと心配する人もいるだろう。だが、お粗末なトラブルではあるが、事故に直結するわけではないので安心されたい。

 異線進入はまれに発生する。東京メトロ関係では筆者の記憶にある限り、東西線で各駅停車の列車が葛西駅の通過線(快速が走行する線路)に誤進入、副都心線の各駅停車の列車が東新宿駅の通過線に誤進入などの事例が発生している。

 この他、昨年8月にJR西日本おおさか東線の普通列車が貨物線に、今年5月にはJR東日本でも東海道線の普通列車が貨物線に誤進入するなど、年1~2回は発生している印象だ。言うまでもなくこのようなミスは撲滅すべきではあるが、限られた線路を多数の列車が走行する大都市部の運行管理の難しさを物語っていると言えるだろう。

副都心線の開業時は
連日トラブルが多発

 副都心線の開業にあたって広報対応をした筆者は、副都心線関係のトラブルが起こるといまだにお尻がむずむずする。私事で恐縮だが、ちょうど15年前、2008年6月14日に開業した副都心線は当時「最後の地下鉄新線」として大きな注目を集め、さまざまな媒体からの取材に東奔西走したのは青春の一ページだ。

 しかし蓋をあければ連日トラブルが多発。朝に発生した輸送障害の影響を午後まで引きずり、池袋~渋谷間の折り返し運転が長時間続くなど、およそ営業路線とは思えないありさまで、同時に有楽町線のダイヤも壊滅状態に陥ったため多方面から大きなお叱りを受けた。

 この反省を踏まえて、車両や信号装置、連動装置の改修や案内板の増設などハード面、要員の見直し、取り扱いの変更などソフト面を改良するとともに、開業から半年弱で異例のダイヤ改正を実施した。

 さらに2013年の東急東横線との直通運転開始に備え、それまで副都心線と有楽町線の線路が平面交差していた小竹向原駅の立体交差化、旧型車両の置き換え、新宿三丁目駅の改札新設など、長期的な対策に着手。また有楽町線内の遅延対策として、豊洲駅の折り返し設備整備や新木場車両基地の拡充なども行った。