終点での折り返しや待避線への進入など列車の運行にはポイント操作が不可欠だが、大都市部では1日当たり数百本もの列車が数分間隔で走行しており、これを全て人力で対処するのは困難である(通常のダイヤが複雑すぎるため、あえて自動化しない京急電鉄のような事業者もあるが、ここでは省く)。

 そこであらかじめ入力されたダイヤに基づき、コンピューターが自動でポイントを操作する「自動進路制御装置 (Programmed Route Control、PRC)」や、これを高度化した「列車運行管理システム(Programmed Traffic Control、PTC)」などが導入されている。

 しかし遅延や運転見合わせなど事前にプログラムされたダイヤから大きく逸脱した場合は機械では対応できないため、指令所が列車ごとに発車時刻や行先などを変更し、ダイヤの回復を図る「運転整理」と呼ばれる作業を行い、各駅はこれに従ってポイントを手動で操作する。そのため信号操作の資格を持った係員は定期的に訓練を受けている。

 なお手動操作と書いたが、もちろんトロッコのように人力でポイントを切り替えているわけではなく、駅事務室などに置かれた連動制御盤上で、それぞれのポイントのスイッチを操作する。ただ昔はテコなどを用いて物理的に操作していたため、鉄道の現場では今もポイントを「てこ」、その操作を「てこ扱い」と呼んでいる。

他の路線でも
異線進入はまれに発生

 てこ扱いが正しく行われないと大変危険である。たとえばポイントが反対向きの線路に進入したり、通過中にポイントが動くと列車は簡単に脱線してしまう。また、複数のポイントを渡る場合は、そのうち一つでも誤りがあれば走れない。正しい進路を構成し、その上で出発信号を出さないといけない。

 一つ二つのポイントであれば人間の注意力でも対応できるが、駅の規模が大きくなりポイントの数が増えていくと、「正しい組み合わせ」かどうか、人間が短時間で判断するのは困難だ。

 そこでいにしえの人々は複数のポイントと信号機を機械的に接続して連動させ、正しい組み合わせの時のみ動く「連動装置」を、19世紀半ばに発明した。装置は人力の機械式から電動式、コンピュータ式へと進化を重ね、現在も鉄道の安全対策の根幹に位置づけられている。

 とはいえ、連動装置はあくまで組み合わせを判定するものなので、異なるポイントを操作した場合でも、矛盾がなければ進路は構成されてしまう。今回の小竹向原も副都心線列車が時間調整で停止中、後続の有楽町線列車に対して行うポイント操作を行ってしまったことが原因だ。なおどの進路に進むかは当然、運転士にも示されるので、その確認が不十分だったこともトラブルを招いた一因である。