足元の半導体市況は強弱混合のまだら模様

 足元の半導体市況は、強弱混合のまだら模様だ。どちらかといえば、弱い部分が目立つ。要因の一つとして、ウィズコロナの生活に伴い、スマホやパソコン向けのチップ需要が減少していることがある。在庫は高止まりし、NAND型フラッシュメモリーなどの価格は下落した。韓国のサムスン電子、SKハイニックスは生産調整を余儀なくされている。

 米国のIT分野では、SNSやサブスクリプション型ビジネスモデルが行き詰まり、クラウドコンピューティング分野でもニーズが減少している。データセンターで使われる半導体の需要は減少し、インテルの業績も悪化した。

 一方、需要が伸びている分野もある。一部では、「成長期待が高まり過ぎだ」との警戒感はあるものの、AIのトレーニングに利用されるチップの需要は急増している。そのきっかけは、22年11月以降、米OpenAIによるChatGPTが急速に普及したことだ。ChatGPTの利用者は、すでに1億人を突破したという。

 それに伴い、米エヌビディアが設計と開発を行うチップ、「H100」の需要が急増している。米マイクロソフトはChatGPTを用いて検索事業などを強化し、グーグルがトップシェアを誇る広告市場で巻き返しを狙っている。

 一方のグーグルも対抗して、生成AI「Bard」の利用を加速させている。いずれにせよH100の需要は押し上げられている。

 汎用型の利幅が薄い車載用半導体に関しては、幾分か需給の逼迫(ひっぱく)は解消された。しかしそれでも、供給は十分ではない。電気自動車(EV)シフトなどを背景に、自動車に搭載されるチップの点数は増加している。脱炭素を背景に、蓄電池に用いられるパワー半導体(アナログ半導体の一つ)の需要も増えた。

 また、米中対立の影響も非常に大きい。米国は、中国へ最先端のチップや、その製造装置の輸出規制を強化した。この措置により、台湾や米国、韓国、わが国の半導体関連企業にとって、中国の需要を得ることが難しくなった。

 こうしたことから、市況がまだら模様の中、半導体産業の構造変化は加速、複雑化している。