言い間違いの頻度が増す
「失言製造機」
アメリカ合衆国史上最高齢の大統領、バイデン氏には、「言い間違い」の急増で「認知症が悪化しているのでは」との懸念、そして歩く速度の遅さや公衆の面前で転倒したことなどから「パーキンソン病なのでは」との不安もつきまとう。
とりわけ深刻なのが「言い間違い」の多さだ。
バイデン氏はかつて、上院議員だったオバマ元大統領を「アフリカ系アメリカ人」と呼んで物議を醸したことがある。車いすの州議会議員を紹介する際、「みんなに見えるように立ち上がってください」と促し批判を浴びたこともある。バイデン氏が「ギャフ・マシン」(失言製造機)と呼ばれるゆえんである。
近頃、それが頻発している。以下に主だった失言を列記するが、いずれも「これはひどい」というものばかりだ。
<最近のバイデン氏の失言録>
○「文大統領!」(2022年5月20日、ソウルでの米韓首脳会談)
⇒初対面の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に、「文(在寅)大統領」と呼びかける失態。
○「中国が台湾を攻撃すればアメリカ軍が防衛する」(2022年9月18日、CBSテレビ)
⇒アメリカの中国に対する「あいまい戦略」を覆しかねない失言
○「ジャッキーはいるか? ジャッキーはどこだ?」(2022年9月28日、ホワイトハウス)
⇒飢餓撲滅を目指す会議で、交通事故死した共和党議員を壇上に呼ぼうと連呼。
○「大統領、再びお会いできてうれしい」(2023年5月18日、日米首脳会談)
⇒岸田文雄首相に「大統領」と呼びかけ、G7広島サミット後の記者会見でも2度、首相を「大統領」と言い間違い。同様の間違いはインドのモディ首相に対しても。
○「女王陛下、万歳!」(2023年6月16日、コネティカット州での演説)
⇒銃規制を巡る演説を意味不明の言葉で締めくくり、報道官が釈明に追われた。
○「私が説得し日本は防衛費を増やした」(2023年6月20日、カリフォルニア州での集会)
⇒日本の防衛費増額は自分が岸田首相に働きかけた結果だと明言。のちに修正。
○「習近平総書記は独裁者」(同)
⇒ブリンケン国務長官が習近平氏らと会談し、対話継続で合意した矢先の失言。
○「彼らはイラク戦争で負けている」(2023年6月28日 ホワイトハウス)
⇒ロシアの民間軍事会社ワグネルの反乱を受け、プーチン政権について「ウクライナ戦争で負けている」と表現すべきところを「イラク戦争」と言い間違い。
○「『次は台湾ではないのか』と岸田首相が述べた」(2023年6月28日、シカゴでの集会)
⇒真偽は不明だが、事実であれば、中国と台湾問題を巡る岸田首相との会談内容を暴露してしまったことになる。日中関係にも影響が及ぶ。
2020年の大統領選挙では、民主党候補者を選ぶ予備選挙や党員集会の序盤戦で敗北を繰り返しながら逆転し、「ミラクル・ジョー」と呼ばれたバイデン氏。
今回は、民主党候補者の指名争いで、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(69)という、「ジョン・F・ケネディ元大統領のおい」というだけしか「売り」がない候補の追随を許している。その最たる要因が健康面での不安である。
バイデン氏が、ケネディ氏に敗れる可能性は「ほぼない」としても、民主党候補者選びを経て共和党候補との本選にも勝利して再選された場合、さらに4年間、激務をこなせるかどうかはまったく見通せない。
「憲法修正第25条」(大統領が職務遂行不能となった場合に適用される条項)が発動されることになりはしないかと危惧するのである。