危険な地域から芸術発信の場へ

 ロサンゼルスのダウンタウン、特にリトル・トウキョウからその東南に位置する区域はこの7~8年間に再開発が進み、アーツ・ディストリクト(Arts District)としてロサンゼルスのダウンタウンに新たな意味を与えています。

 それ以前は「危険な地域」であったこの区域が今や「クリエイティブな仕事をし、生活をする地域」へと、その意味が大きく変わったのです。それにともない、この地域を訪れる人が増え、新しいロサンゼルスの一つの目的地となっています。ちなみに、コム デ ギャルソンが2004年にロンドンで開店した新しい小売店の形態であるDover Street Marketはその後、銀座、シンガポール、北京、ニューヨーク、そして2018年にはロサンゼルスのアーツ・ディストリクトにオープンしました。

昔はどうだったのだろう?

 たとえば、フィルムカメラから始まり、ポラロイド、デジタルカメラ、ガラケー、スマートフォン、そしてまた新機種デジタルカメラを歴史的に俯瞰して、その「意味」の移り変わりを追ってみると、意味の変遷が鮮明に浮き上がると思います。

 そして、長い間変わらない意味、新しくつくられた意味、あるいは一時期蔑ろにされたけれど、また復活してきている意味に気づかれるのではないでしょうか。

 あるいは、筆記具のイノベーションの歴史をテーマにすると、石器時代から綿々と現在まで引き継がれている意味、石器時代の筆記具の問題点とその解決案、それ以来19世紀に至るまでの筆記具の新しい製品を知り、19世紀の画期的な新製品だった万年筆が抱えていた問題点とその解決案、そしてそれから現在に至るまでの筆記具の意味を考えるのです。こうした歴史的洞察から、未来に向けての新しい意味をつくるのです。