もちろん製品であれば、その品質・機能・装備・耐久性・サイズ・色といった客観的な属性を考慮に入れると思いますが、それに加えて、あるいは往々にして、それより重要な決め手となるのは、その製品が呼び起こす感動・共感、そして、その製品がもたらす心理的、文化社会的満足度ではないでしょうか。

なぜ、あの商品・サービスは選ばれたのか

 イタリアのミラノ工科大学(Politecnico di Milano)教授のロべルト・ベルガンティ(Roberto Verganti)は、この点を明らかにしています。

 2000年代半ばまでの50のイノベーションの事例を分析したベルガンティの研究によると、イノベーターが製品・サービスに与えた新しい「意味」が消費者・ユーザーにとって購入の主要な決定因となることがわかりました。

 たとえば、イタリアのAlessiはキッチン用品のプランドですが、キッチン用品がもつ道具としての基本的機能の意味を変える新しい意味を提供しています。単なる道具としての使いやすさ、耐久性ではなく、遊び心いっぱいのオブジェとしてのキッチン用品が、Alessiが提案する新しい意味です。

 任天堂のWiiはゲームコンソール(ゲーム機本体)ですが、高画質、複雑なゲームという指先で遊ぶゲームという意味を追求するのではなく、友だちと一緒の時間に身体を動かして遊ぶゲームという新しい意味をつくり上げました。

 スイスのスウォッチは、クオーツ式腕時計が従来提供してきた低価格で高精度という意味から、毎年2回シーズンごとに新しいデザインの時計をつけ替えるファッションという新しい意味をもたらしました。

 スターバックスがアメリカ市場に導入した新しい意味は、コーヒー店を単にコーヒーを買う所から自宅、オフィスとは別の第三の場所に変えたことです。

 そして、トヨタのプリウスはエコカーの意味を単に燃費が良い車から地球を救う車へと変え、消費者の共感を得たのです。

もし車が○○だったら

 日本の高校生がドラッカースクールのアメリカでのブログラムに参加したときに思い出に残った体験はフリーウェーでの交通渋滞でした。訪問先のバーバンクのウォルト・ディズニー・スタジオとパサデナのアートセンターから宿舎のあるクレモントに戻る道中は、交通渋滞がなければ40分ぐらいなのですが、夕方の渋滞に巻き込まれたので、ゆうに1時間半を超えてしまいました。