この道筋を毎日車で通動することを想像してみてください。もし自動運転の車があったなら、通勤はもっと楽になり、ストレスが小さくなるのに、と思うようになるでしょう。

 さらに、5日に1回のガソリンスタンド参りがなくなったら最高でしょう。もし、通勤用の車が電気自動車になって家で充電でき、自動運転でフリーウェーを走り、ストレスが軽減し、事故が減るならば、電気自動車と自動運転はユーザーにとってとても大きな意味があることになります。ユーザーに新しい意味を提供したとき、技術革新を追求することの意味が明確になってくるのです。

新しい「意味」をつくりだしたスタジオジブリ

 日本のブランドが新しい「意味」をつくり、世界的に支持されている代表例としてはアニメーション制作会社のスタジオジブリがあげられます。ジブリ以前のアニメーションはハリウッド、特にディズニーの作品に代表されるように、主人公は住々にしてステレオタイプ化されたヒロインであり(多くはお姫様です)、ありきたりの冒険と恋物語がそのストーリー展開でした。

 ところが、ジブリ作品の主人公となる女の子はバラエティに富んでおり、型にはまらない性格をもっています。そして、アニメの中で展開される世界とその世界観がこれまでに見たことのない想像力豊かなものであるということも、ジブリ作品を鑑賞した世界中の人を強く印象づける点ではないでしょうか。

 さらには、日本独特の文化が優しく、柔らかく描かれていることも、もちろんハリウッド製のアニメとは一線を画する点でしょう。

 言い換えるならば、ハリウッドのアニメ、特にディズニーがつくった「意味」、すなわち普遍性、娯楽、おとぎ話、アメリカの文化、ハッピーエンディング、とは別の新しい「意味」を提供しているのです。世界のアニメーション市場における規模ではディズニーは及びませんが、確固たる支持者層が世界中に存在する事は特筆に値すると思います。

コム デ ギャルソンが世界で評価される理由

 アパレルのコム デ ギャルソン(COMIME des GARCONS)も新しい「意味」をつくった例と言えるでしょう。川久保玲氏が1969年に創設したコム デ ギャルソンは創設以来50年以上の間、制作及び製造における日本の高い技術力を基に日本で可能な限り生産を行なってきています。世界の高級ブランドであるので価格帯は高く設定されていますが、その服がつくる「意味」に共感する人たちの間で確固たる地位を世界的に確立しています。「多勢に動じない自分としての工夫・独自さ」という「意味」に共感する、「自分は自分」タイプのペルソナの間で世界的な評価を受けてきたのです。

危険な地域から芸術発信の場へ

 ロサンゼルスのダウンタウン、特にリトル・トウキョウからその東南に位置する区域はこの7~8年間に再開発が進み、アーツ・ディストリクト(Arts District)としてロサンゼルスのダウンタウンに新たな意味を与えています。

 それ以前は「危険な地域」であったこの区域が今や「クリエイティブな仕事をし、生活をする地域」へと、その意味が大きく変わったのです。それにともない、この地域を訪れる人が増え、新しいロサンゼルスの一つの目的地となっています。ちなみに、コム デ ギャルソンが2004年にロンドンで開店した新しい小売店の形態であるDover Street Marketはその後、銀座、シンガポール、北京、ニューヨーク、そして2018年にはロサンゼルスのアーツ・ディストリクトにオープンしました。

昔はどうだったのだろう?

 たとえば、フィルムカメラから始まり、ポラロイド、デジタルカメラ、ガラケー、スマートフォン、そしてまた新機種デジタルカメラを歴史的に俯瞰して、その「意味」の移り変わりを追ってみると、意味の変遷が鮮明に浮き上がると思います。

 そして、長い間変わらない意味、新しくつくられた意味、あるいは一時期蔑ろにされたけれど、また復活してきている意味に気づかれるのではないでしょうか。

 あるいは、筆記具のイノベーションの歴史をテーマにすると、石器時代から綿々と現在まで引き継がれている意味、石器時代の筆記具の問題点とその解決案、それ以来19世紀に至るまでの筆記具の新しい製品を知り、19世紀の画期的な新製品だった万年筆が抱えていた問題点とその解決案、そしてそれから現在に至るまでの筆記具の意味を考えるのです。こうした歴史的洞察から、未来に向けての新しい意味をつくるのです。