MYパーパスの追求が
自律型人材を育む
取締役常務執行役員CHRO兼CSuO
酒井香世子 KAYOKO SAKAI *上記肩書きはフォーラム開催時のもの。 2023年4月1日に、損保ジャパンDC証券 代表取締役社長に就任。
損保ジャパンのミッションは「社員の幸せや働きがいをベースとして」という言葉で始まり、事業基盤の中心に「働く人」を位置付けています。社員の成長支援から、評価、異動・登用までが連動した制度を用意しており、社員一人ひとりがキャリアにオーナーシップを持つ仕組みの下、あふれる好奇心によって、「しよう」「したい」「なりたい」に突き動かされる自律型人材を育てています。
注力しているのは、「MYパーパス」の追求です。これは、自分の人生の目的、あるいは働く意義などを指します。会社のパーパスとMYパーパスとの重なりを見つけ、そこに自分のミッションを見出すことで、幸せや働きがいを実現しようというものです。トップマネジメントみずからがMYパーパスと自分のミッションを語る機会を設けることで、社員に想いを伝えています。
パーパスを実践し、自己成長をするための学習基盤となっているのが、2020年10月に設立した、オンライン形式の企業内大学「損保ジャパン大学」です。通常の大学と同様に、学部やゼミナール、サークルなどを有し、意欲に応じて学習を継続できます。社員2万3000人のうち2万人以上がアクセスする学びのプラットフォームとして定着してきました。
今後は学習履歴をデータ化し、適所適材による異動や登用にも活用予定です。経験や勘、記憶に基づいた人事から、客観性、傾向値、記録に基づく人事へと転換していきます。
「越境せよ。」
チャレンジを促す人事制度改革
取締役 常務執行役員
福原真弓MAYUMI FUKUHARA
*上記肩書きはフォーラム開催時のもの。 2023年3月30日に、サッポロ不動産開発
取締役専務執行役員に就任。
北海道の開拓使麦酒醸造所をルーツとするサッポログループは「越境せよ。」を人事戦略の基本理念としています。その理念の下、挑戦や変化を奨励する風土醸成のため2020年に人事制度を全面刷新しました。
管理職には職務等級制度を導入して、処遇を人ではなく、ポストにつける形にしました。一般社員においては、本社人事部門に集中していた各種権限を現場へと委譲し、管理型であった制度を現場での育成支援型にシフトしました。年間考課ランク制度は廃止され、これまで管理職がランク付けに費やしてきた時間と労力を、メンバーの成長支援にそそぎ込みます。
その取り組みとして挙げられるのが、「人財育成会議」です。これは、現場の管理職全員が、所属メンバー一人ひとりの育成計画について議論する場です。また人事評価も、1on1による日々のFBや挑戦の支援が前提であり、それによって処遇決定の納得度も上がると考えています。
もちろん、こうした意識改革は簡単には進みません。人事スタッフは根気よく、現場の管理職や社員と対話を続ける努力が欠かせない。「人のことは、大胆であっても丁寧に」をモットーに、互いの言葉に耳を傾けながら、双方が変化を受け入れる姿勢が大切です。
人財戦略は経営戦略が明確でないと描けませんが、人財育成がある程度進んでいないと経営戦略の具体像が描きにくいのも事実です。それゆえサッポログループは、「一歩先行く人財戦略」を目指しています。
ピープルアナリティクスによる
「人事の分権化」で仕事を面白くする
日本のビジネスパーソンの自己研鑽投資に関する調査結果があります。「研修等に参加しているか」「語学学習をやっているか」といった設問で自己研鑽活動の有無を尋ねているのですが、日本は他国と比べて自己研鑽投資が軒並み低く、「何もしていない」と答えた人が半数近くに上りました。
大湾秀雄 HIDEO OWAN
仕事の面白さについて聞いた国際社会調査の設問では、欧米諸国で7~8割、スイスで9割が「仕事が面白い」と答えているのに対して日本は54%にすぎず、半分近くが「面白くない」「どちらともいえない」と答えています。さらに仕事の面白さを決定付ける要因について分析すると、日本は特に「興味・関心とのマッチング」「人間関係」との相関が強いことがわかりました。
この調査結果から見えてくるのは、会社都合で人材配置が行われて自分の意思で仕事を選べない、日本の人事制度の問題点です。興味のないことに従事せざるをえず、仕事が面白くない。自律的なキャリア計画が立てにくいため、自己投資意欲も湧かない。といった状況が生まれます。
この状況を変えるには、「人事の分権化」がカギを握ります。具体的には、社内公募制やフリーエージェント制、マッチングアルゴリズムの活用など個人と現場のニーズを反映した形で人員配置を決める施策の導入が必要です。ピープルアナリティクスによって職種やスキルの標準化・体系化を進めて、人材ポートフォリオを可視化することが、変革への第一歩です。