これらを「メカニカルデザイン」のクレジットで担当したのが、大河原邦男です。竜の子プロダクション出身で、美術部に配属された直後、『科学忍者隊ガッチャマン』(72)で上司の中村光毅(『ガンダム』の美術設定)に命じられ、日本初の専業メカニックデザイナーとなった人物です。

 70年代中盤のタツノコ退社後はフリーランスとして数多くのロボットデザインを手がけ、アニメ作画に適したシンプルな形状と、商品としての立体感・存在感を巧みに結びつけるノウハウを確立。これが放送後のプラモデル展開時、敵側ふくめての商品化が進んだときに大きなメリットをもたらしました。富野監督によるラフスケッチに基づくメカも多いのですが、三次元的な魅力を成立させたのは大河原デザインの功績です。

『戦争論』『最終戦争論』など
バックにある戦争の教養

「世界観」は「AをBのように解釈する」という「見立てのプロセス」を含んでいます。デザインされた形状を、戦闘シーンでどう運用するのか。『ガンダム』は演出レベルでも世界観を重視することで、リアリティを高めています。ことに主役ガンダムには兵器・戦士・主役と、全方位的な「見立て」が集約されています。だから四十数年経過したいまでも現役を継続する、別格な価値を放っているのです。

 たとえばガンダムの頭部バルカン砲には、レシプロ戦闘機のイメージが投影されています。二足歩行機能を備えているため、運用面は戦車に近いものがあります(劇中でも「陸戦兵器」と明言)。それでいてヒーロー的な必殺武器もそなえている。背中には高熱で敵を切り裂くビーム・サーベルを2本装備して近接戦闘に対応。遠距離用にはビーム・ライフル、ハイパー・バズーカなど射撃武器を使い分け、機動隊の盾のようなシールドも装備しています。

 この装備の多面性で、剣豪の特殊な剣術(二刀流やツバメ返しなど)や、孤独に狙いをつけるガンマンなど、娯楽映画で培われてきたイメージの「見立て」も可能となり、兵器としての無機質さにヒーロー性が加算されたわけです。