コツコツと業績を伸ばしてきた経営者が直面する「売上の壁」
特に、年間の売上高が2億円から3億円のレベルに達すると、そこでピタッと成長が止まってしまう経営者が多いという。
そんなときに参考になるのが、【発売から18年、2万人以上の経営者に支持されるバイブル】として、待望の新装版が発売された『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』だ。
本稿では、上場経験のある経営者から熱烈な推薦を受けている本書の中から、経営の基礎である「設計図」思考の一部を紹介する。

やり手の経営者ほどハマりやすい思考の落とし穴とは?Photo: Adobe Stock

2億円企業と10億円企業の決定的な違い

 やり手で、発想力のある社長ほど「ここまでうまくいっていたのだから、今までのやり方は悪くないはずだ。やり方はいいのだから、もっと手数を増やすにはどうしたらいいんだろうか……」、そんなことを考える。あるいは「本業はこのままで、もうひとつ、基盤となるような新事業を立ち上げて、収益の柱を2本にしよう。その方が安定もするはずだ……」と考えてみたりする。

 企業ですから何か売り物になる商品があって、それを買ってくれるお客様がいて、売上が伸びて必要な経費を払って……という基礎中の基礎は同じですが、2億円企業と10億円企業では、そのために動いているハコの中身がまるっきり違うのです。

 どのくらい違うのか、と言えばソロバンと電卓ぐらいは違います。もっと差が大きいかも知れません。計算をする、という基本機能は同じですが、使われている部品も素材もまったくかけ離れています。部品が違うことによって間違いがなくなったり、計算のスピードが桁違いに速くなったりしていますし、ソロバンではできない複雑な計算もできる。

 さらに言えば、ソロバンを使いこなすためにはある程度の訓練、練習が必要です(ソロバン教室、というのが昔はたくさんありました)が、電卓にはさほどのトレーニングはいらない、ということです。新品を買えば取扱説明書も付いてきますが、最初から最後まで読んだことのある人、いますでしょうか? にもかかわらずあなたもそれなりに使いこなしている。

 どちらも、「計算する」という機能を提供してくれる道具ですが、ハコの中身はまったくの別次元に立ってつくられている点で異なります。
 その違いを私は「ビジネスモデルの違い」と呼んでいます。まずは2億円企業と10億円企業とでは、その中身がまったく違うものなのだ、ということを知ってください。

 そして10億円企業の社長の仕事、とは「電卓をつくること」なのです。

10億円企業の社長は「自ら戦闘しない」

 これは2億円企業の経営と何が違うのでしょう? この例え話を利用しながらズバリ言い切れば、「電卓で計算するのではなく、計算する機械そのものの設計図を描く」=「自社のビジネスモデル、すなわち設計図をつくる(入手する)」のが社長の仕事になる、ということなのです。

 2億円企業における社長は現場の最前線でバリバリ働いて仕事を取り、自ら売上をつくるのが主な役割になっています。自分自身でソロバンをかなり速いスピードでパチパチパチ……とやっているイメージ。私はこうした状況を「社長が自ら戦闘している状態」と見ています。

 このまま、自分が戦闘しているような大きな環境を変えない限り、成長の余地が非常に限られているということが分かりますでしょうか? 電卓を持っていないのですから、社長自身がさらにソロバンの達人になって今以上に計算のスピードを上げるか、自分と同じくらいにソロバンができる人間をどこかから見つけてくるほかありません。
 これは相当に難しいことである、と言わざるを得ません。とにかく社長自身がソロバンを手放すことができませんから、自分はいつまでたっても楽にはならないのです。

 それに対して、10億円企業には電卓があります。ド素人がソロバンの達人に十分に対抗可能なスピードで計算できますし、計算する人間も代替がききます。しかし電卓を叩くことはできても、当然中身がどうなっているかなんて分かりませんから、誰かが電卓という便利な仕組みをつくってあげる必要があるわけです。

 これが10億円企業における社長の仕事。自分が計算するのではなくて、他の社員がそれほどの技を持たずとも計算ができてしまうような環境をつくることです。この状況では、社長は戦闘していません。最前線で戦闘するのはそれぞれの社員であって、社長の役割は戦況を見守り、次の一手を考え、手配することです。
 ところで、裏蓋を開けて電卓の中身をご覧になったことがありますか? そもそも電池で動きますし、いろんな電子部品が詰まっていて、ソロバンとはまったく違う仕組みになっています。そして部品がうまくつながっていて、全体として電卓という道具になる。

 つまり、このときの社長の仕事とは、部品の一つひとつを考え、それがうまく力を発揮するようにハコの中に配置していくこと。電卓という道具を設計することなのです。この「設計図」の別名が「ビジネスモデル」です。

───ここに紹介したことのほか、『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』では、経営者が企業の成長のために考えるべき「設計図」とは何かをコンパクトに紹介しています。