歯止めがかからない不動産市況の低迷

 これまで、中国では地方政府が不動産デベロッパーなどに土地を売却し、その資金を固定資産投資などの景気対策に再配分して高い成長を実現してきた。マンション建設の増加は、企業の設備投資や生産、雇用も押し上げた。しかし、このメカニズムが限界を迎えている。

 リーマンショック後、中国では、不動産価格が上昇した。2011年から20年頃まで新築住宅販売価格はほぼ倍に上昇した。内陸部での住宅供給増加など、共産党政権は不動産の建設(投資)を増やした。世界的な超低金利環境もあり、「住宅価格は上昇し続ける」といった“神話”により、強い成長期待が醸成された。

 投機熱の高まりを背景に、地方政府の土地使用権譲渡収入は増えた。それを元手に、地方政府はインフラ投資や産業補助金政策を強化した。その結果、コロナショックが発生するまで、中国経済は6%台を上回る高い成長を実現した。習近平政権は、主に住宅購入者向けの規制を強化し、バブルの膨張、景気の過熱をコントロールして高成長を続けようとした。

 しかし、コロナ禍の発生と、20年8月の不動産融資規制(三つのレッドライン)の実施により、不動産市況は急激に冷え込んだ。23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、住宅価格が下げ止まるかに見える局面もあったが、価格上昇の勢いは弱い。年初来、不動産投資は減少基調である。

 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。インフラ投資などの対策を打とうにも、財源不足から思い切った対策は打ち出しにくい。