中国株を売った資金を日本株に振り向ける海外投資家
最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。外国為替市場では、米ドルに対する人民元の下落が鮮明となっている。6月27日、中国人民銀行はオフショア市場で人民元買い・米ドル売りの介入を実施したもようだ。
株式市場に目を向けると、22年以降、上海、深センともに本土の株価は多少の上下はあるものの、弱含み傾向だ。香港株式市場も同様である。対照的に、5月以降、主要先進国の株価は勢い良く上昇した。AI(人工知能)関連企業への成長期待や、依然として緩和的な金融環境などの影響は大きい。
そうした状況下、1990年代以降、あまり観察されなかった変化も起きた。上海や深センなどの市場で中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えているのだ。90年代のバブル崩壊を機に、日本株を売る投資家は増えた(ジャパンパッシング)。日本株を売った投資家は、「世界の工場」として成長する中国に一部の資金を振り向けてきた。
現状、中国の不動産市況は大方の予想よりも低迷している。習政権は、民間企業の成長促進よりも、思想教育などをより重視しているように見える。台湾問題などの地政学リスクや生産年齢人口の減少は、グローバル企業が中国から生産拠点をシフトする要因になっている。いずれも、持続的な景気の回復を阻害するだろう。
一方、わが国が地政学リスクの上昇に直面するリスクは、米国との関係を基礎に、今のところ抑えられている。円安進行の影響で海外投資家からすると日本株には割安感がある。半導体分野において、わが国が産業政策を修正し始めたことも、日本株への資金流入を支えている。
米国の金融政策の動向も、中国経済を下押ししそうだ。米国の物価は2%を上回る状況が続いている。米FRBの金融引き締めは長引くだろう。米中の金利差が拡大し、中国から資金が流出する勢いは強くなる可能性が高い。
あるいは、いずれ米国株が下落し、中国株に売り圧力が波及する恐れもある。当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ。