「本命校」を選ぶ前にまず考えるべきこと
現在発売中の『本当に子どもの力を伸ばす学校 中高一貫校・高校合格力ランキング』(ダイヤモンド・セレクト2023年8月号)では、今回も2024年度受験生のために「必勝併願パターン」表を掲載している。これに関しては、入試の主な変更点とともに、後日また触れていきたい。今回は、この夏休みから考える本命校と併願校の設定の仕方について、これから半年間の保護者の役割にも触れてみたい。
夏休みを前にして、お子さんの本命校はどのように決めているのだろうか。小4、小5の頃から、「目指せ○○校」と難関校を掲げてきた受験生もいるだろうし、模試の成績を見て、「なんとなくこのあたりかな」と思っている受験生もいるだろう。文化祭や学校説明会に参加して、その学校の魅力に目覚めたというご家庭も多いかもしれない。
横浜で「Tサイエンス」という個人塾を主宰している恒成国雄先生は、東西のトップ進学塾で教えてきたベテラン塾講師である。その経験を元に、受験校の選び方を指南してくれた。以下、その骨子を述べていきたい。
反抗期を経ず受験に突入する精神的に幼い男の子の保護者がまず考えるべきことは、自分の子どもが、A:土壇場に実力を発揮できるタイプなのか、B:追い詰められるとダメになるタイプなのか、そこを見分けることだという。
Aタイプの子ならば、背伸びした受験校も設定して、「全部落ちたら公立に通いなさい」と脅しめいたことも言えるが、Bタイプの子の場合には、とにかくまず合格を得ることを優先する必要がある。メンタルの状況を見て、合格率が高そうな安全校にするか少し背伸びさせるか、二つの選択肢を常に用意しておくことが肝要となる。
多くの受験生の保護者は、模試の合否判定を見て、合格率5~6割の学校を本命校に据える傾向があるようだ。一件、合否は半々に思えるが、実際は、全部受かるか全部落ちるか、両極端の結果となることがよくあるという。それはなぜなのか。
先ほど挙げたお子さんのメンタル面の特徴は、合格確率を1~2割上下させることも珍しくない。当日の精神状態によって、合否判定がひっくり返ることもよくある。それ以上に、受験校の目標設定が的確でなかったことによる、これから半年間の子どもの失速の影響が大きいのではないか、というのが恒成先生の見立てである。
6~7割の合格確率が「本命校」で出たとしても、それを第1志望にしてはいけない。これからの子どもの学力の伸長を考え、あえて合格率が半分にも届かないチャレンジ校を第1志望に据えて、「本命校」は第2志望にする。この両校の偏差値は、五つほど離れていると取り組みやすいかもしれない。
高い合格率が出ると、そこから努力をしなくなり、結果として全部落ちるという例も目にしてきただけに、この伸びしろを考えたストレッチは目標設定に欠かせない。第1志望の合格確率が5割を超えるようになれば、「本命校」のそれも8~9割程度まで伸びるはずだ。