以上の意見も現在、この問いを立てれば同じ傾向になるだろう。つまり、30年間以上、外国人の受入れの議論は堂々巡りをしていることになる。国民は外国人の受入れについて肯定的な認識と健全な問題意識を持っているが、それに沿った政策が行われてこなかったということだ。

 その後、国民の認識はどう変わったのだろうか?

小泉政権下で移民肯定する国民の声

 小泉純一郎政権の2004年5月、内閣府が実施した「外国人労働者の受入れに関する世論調査」8がある。バブル崩壊以降、長期の経済停滞が続いたが、2000年代に入ってようやく抜け出し、経済回復のサイクルに入っていた。2004年は小泉首相が韓国の盧武鉉大統領と済州島で会談した年でもある。

 この調査では、外国人労働者についての以下の質問項目がある。

質問1 専門的な技術、技能や知識を持っている外国人の入国は認め、単純労働に就労することを目的とした外国人の入国は認めていない現制度に関して。

(ア)今後とも専門的な技術、技能や知識を持っている外国人は受け入れ、単純労働者の受入れは認めない 25.9%

(イ)女性や高齢者など国内の労働力の活用を優先し、それでも労働力が不足する分野には単純労働者を受け入れる 39.0%

(ウ)特に条件を付けずに単純労働者を幅広く受け入れる 16.7%

(エ)わからない 17.7%

 単純労働者を受入れる(イ)(ウ)を合わせればここでも半数以上が肯定していることになる。

 さらに質問は続く。

質問2 日本人が就きたがらない職業に外国の人が就くことについて。

(ア)日本人が就きたがらない仕事に、単に外国人が就けばいいという考え方はよくない 32.6%

(イ)外国人本人が就きたがっている場合にはどんどん就いてもらうのがよい 31.1%

(ウ)よくないことだがやむを得ない 28.4%

質問3 外国人労働者に求めるもの。

(ア)日本語能力 35.2%

(イ)日本文化に対する理解 32.7%

(ウ)専門的な技術、技能、知識 19.7%

(エ)預貯金等の資産 1.3%