ワンルームマンションの
価格の目安はいくら?

 まとめると、お孫さんへの援助費用1000万円と、Mさん自身の予備資金1500万円を合計した臨時支出の総額は2500万円です。先ほどの金融資産8500万円から、この金額を差し引いた残りは6000万円です。

 そこからワンルームマンションの購入資金を支払った残高が、老後の年間赤字額(40万円)を取り崩す元手になります。先ほどの例と同じく4000万円の物件を買ったとすると、残額は2000万円。そこから毎年40万円を取り崩していくと、理論上は50年後(Mさんが115歳)まで資金は底を突かず、心配は無用だといえます。

 さらにグレードの高い物件を狙う場合、上限の目安は4600万円です。物件購入後の金融資産の残額は1400万円で、年間40万円を取り崩していくと35年後(Mさんが100歳)まで持ちこたえられますが、「人生100年時代」にはギリギリのラインです。それよりも物件価格を引き上げると、老後の資金繰りが厳しくなる危険性が増すため、注意が必要です。

 なお、マンションを購入すると、不動産会社に支払う仲介手数料が発生します。中古物件を購入した場合は、部屋のクリーニング代やクロス交換費用なども、基本的には買い手側が負担します。引っ越し費用も決して安くはありません。こうした追加支出を考慮に入れて、上記の物件価格の目安は「諸費用込み」とお考えいただければと思います。

 さて、これまではMさんが65歳まで働くことを前提に試算してきました。ですが、相談文で「体力面の不安」に言及されていたことから、この後はMさんがもう少し早くシニアバイトを引退したケースも簡単に試算しておきましょう。

 Mさんが65歳未満で退職した場合、公的年金の受給開始はまだですので、年収は亡くなったご主人の遺族厚生年金(年間180万円)だけになります。年間支出は270万円ですから、年間赤字額は90万円です。

 そのため早く退職した場合は、マンション価格の上限も1年ごとに90万円減額されることには、ご注意ください。念のため金額を記載しておくと、退職年齢が64歳の場合の上限額は4510万円。63歳では4420万円、62歳では4330万円、61歳では4240万円です。

 仮に60歳の今、Mさんが仕事を辞めた場合は4150万円がマンションの購入上限額です(いずれも諸費用を含みます)。それよりも物件価格を引き上げると家計が苦しくなるリスクを伴うため、ご注意ください。

 ただし、もしMさんが「諸費用込みで4000万円以下」の物件をイメージしているのであれば、無理をして働く必要はないと思われます。ご体調を第一に考えつつ、買いたい物件の予算とのバランスを見た上で、仕事を辞める時期を決めてはいかがでしょうか。