部下は、育てるものではなく、勝手に育つもの
安達:だから、ベテランの管理職ほど、「ほどほどでいいよ」と放っておく人が多い気がしますね。仕事には、その人の成長スピードがあります。いつ成熟するのかは人それぞれなのに、その人のレベルをはるかに超えた成果を求めると、結果的に、部下のポテンシャルを潰してしまう恐れもあります。
それに、新人の頃はなかなか芽が出ず、成長スピードが遅く見えた人が、3年後、爆発的に伸びたりすることもありますしね。
――やっぱり、そういうこともあるんですね。
安達:これがまた、不思議なところで。逆に、新人の頃、器用になんでもこなしていた人が3年後に失速してしまい急に成果が出せなくなる、なんてこともよくあるんですよ。
私も新米上司の頃は、迷走していたこともありましたが、そういう成長スピードの個人差を知ってからは、伸びなくても「まあ、いいや」と思うようになりました。
結局のところ、「自分が人を育てようなんておこがましい」くらいのスタンスがちょうどいいと思います。
――おこがましい?
安達:人は、育てるものではなく、勝手に育つものです。上司にできるのは、「成果を出すための環境」を用意することだけです。
一度「上司」になってしまうと、「上司」という立場にとらわれ、部下に指導することばかりに目が向くようになったりします。でも、「部下の育成」というのは、あくまでも目標を達成するための手段に過ぎません。別に、その人が成長しようがしまいが、チーム全体として目標達成できていれば別に問題ない、くらいの気持ちでいたほうが、部下も気楽に働けると思います。
いずれにせよ、上司が部下の面倒を見すぎていいことは何一つありません。
成長するかしないかは、なにより、部下本人の責任においてやるべきことだと思いますね。
「人を育てるなんておこがましい、自分にできるのは、成果を出すための環境を用意するだけだ」と思っている上司の方が結果、部下が成長したりするんです。その上司が想定していた範囲かどうかは別にして。
「頑張って育成しよう」と思っていた上司の方が、後から見ると「その上司か部下どちらかが潰れていた」というケースも、多々あります。もちろん、こちらは想定していないことだと思いますが。
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