新入社員の心をつかむことも重要だ。ダイハツ工業の技術部門では、毎年約100人の新入社員を迎える。
「最近の新卒社員の約3割は、学生時代にAIや機械学習を学んでいます。そこで新入社員研修の中で30分、機械学習研究会についてプレゼンし、『一緒に機械学習やろう』と呼びかけたところ、約20人が『面白そう』と仲間になってくれました」
遊び心と初心を忘れずに
社内コミュニティ運用のコツ
社内制度やプレゼンの機会をうまく活用し、熱量の高いメンバーを集めた太古さん。ここからどのようにしてコミュニティを盛り上げていったのだろうか。
「コロナ前だった一年目は、まじめに画像認識や音声認識をしたりしていたのですが、もう少し遊び心をあったほうがいいなと思いました。そこで、二年目からは、画像認識を使ってレゴのクルマを走らせたり、複数台で競ったり、ゲーム性を持たせる活動にシフトしました」
身近なオープンデータを使ったデータ分析コンペの勉強会もスタートした。
「近畿圏のデータから大阪の住宅価格をモデルを作って予測しました。『ここは土地柄、スコアが悪いはずだから、この価格はおかしい』など、いろんな観点が入ってくるのが面白かったですね。中古車価格を予測したときの優勝者は、中古車査定士の資格を持ったメンバーでした。専門知識を持った人がプログラムを書くことで、さらに良いスコアが出るという好例です」
業務外とはいえ、様々なメンバーが一緒に活動する以上、いろいろな忖度が発生しそうだ。太古さんは、これをどのように回避しているのだろうか。
「客観的に見て、『それは会社や世の中にとって良いことかどうか』を基準に話し合って決めます。新しいアイディアや異なる意見が出てきたとき、頭ごなしに否定することはしませんが、間違っていると判断したらやりません。ましてや、『誰々さんが言い出したことだから』ということはありません」