失敗を恐れずバットを振り続ける
──アイデア創出、商品開発、人材育成など、商品だけでなく、さまざまな「仕組みのプロトタイプ」がセンターから生まれてきそうですね。
岡本 手応えは感じています。アイデア創出の面では、センター発足直後の「Cook Doオイスターソース」のコミュニケーションプランは、良い事例になりました。簡単メニューとして提案した「瞬間消滅レタス」に合わせて、「レタス保存用新聞」の広告を出したものです。
向井 CMキャラクターの藤原竜也さんが全面に印刷されていて、これでレタスを包むと、驚きのビジュアルに……! SNSでもバズって大反響でした。
岡本 何より、事業部が面白がって協力してくれたのがうれしかったです。おかげで、3年1カ月ぶりにオイスターソースのトップシェアに返り咲くという成果も出せました。UGC(ユーザー生成コンテンツ)を狙って生み出していく取り組みには、これからも力を入れたいと思っています。
大事なのは、たとえ失敗してもチャレンジし続けることです。そんなカルチャーを醸成するために、先日は「スイング・ザ・バット賞」を創設しました。
──三振してもいいからバットを振れ、ということですか。
稲垣 そうです。成果はともかく、フルスイングした人をたたえようと。岡本賞、稲垣賞、向井賞をそれぞれ選んで、賞品は、私たちが自腹であげたいものをあげる(笑)。オフィシャルな賞ではないので受賞者に大きなメリットはないかもしれませんが、メンバーからの拍手と共感が大きなご褒美であり、励みになると考えます。
向井 やっぱり「面白がれる」って大きなパワーですよね。「面白い会社だな」と思った人が集まってくる流れができたらうれしいし、そこからまた新しいムーブメントが起こせると思います。
稲垣 センターができてよかったと思うのは、目指すものが明確になり、事業部と共に何をすべきかが明らかになったこと。やっている仕事そのものは「生活者解析・事業創造部」時代とそう変わらないかもしれませんが、かつては縦割りの組織構造の中で事業部にどこまで関与していいかが分からず、一生懸命やってもうまく理解されず、活用してもらえないことが多くありました。
岡本 縦割りの壁を壊すというのは、ずっと大きな課題でしたね。1990年代にもマーケティングの高度化に取り組む「食品開発部」が創設されて、マーケティング戦略を緻密にモデル化するなど、すごくいい成果を出していましたが、実ビジネスには十分に活用し切れなかった。やっぱり事業部からは「自分たちとは異質な外部の組織」と認識されていたのだと思います。
今回は、デザインとマーケティングをまとめてセンター化したことで、事業部に横串を通すだけでなく、事業部と並ぶプロフィットセンターとして、縦・横どちらの機能も持つユニークな立ち位置になりました。まさに右脳と左脳のように、思考回路は違っても、同じように生活者の方を向いてプロフィットを生み出しつつ、事業部にも貢献していく。多様な個性を統合して成果を出し続けられる組織として成長していきたいと思っています。