生命保険の解約は
定年退職の直前でOK!?
ここからは、二つ目のご質問(ご主人の引退時期)について見ていきます。
まずは、Kさんが62歳を迎えて長女が社会人になる28年の家計収支を試算します。Kさんが「収入半減の再雇用」で働いているとすれば年収は240万円。ご主人の収入が400万円のままだとすれば世帯収入は640万円です。
23年現在の支出額は856万円と推測しましたが、そこから養老・医療保険料(計19万9000円)、教育費(25万円)、住宅設備ローン(60万円)の支払いが不要になります。
年間12万円の財形も終了すれば計116万9000円が減額となるため、28年の年間支出は739万1000円程度になるでしょう(キリが悪いので739万円とします)。もろもろの支出が減るとはいえ、世帯収入640万円、支出739万円ですから年間99万円の赤字です。
それでも、Kさんが63歳になる29年には住宅ローンの返済(年240万円)が終了し、年間支出額は499万円まで減ります。家計収支は年間141万円の黒字に転換します。
便宜上、Kさんが61歳時点の金融資産額をちょうど1800万円とすれば、そこから99万円が取り崩され、141万円が上乗せされるので、63歳時点での金融資産額は1842万円です。64歳になると1983万円まで増えます。
もともと予定していた支出(車2台の買い替え費用500万円、住宅設備交換費用150万円)をここで計算に含めると、貯蓄額は1333万円となります。
一方で、Kさんには資産形成を兼ねた生命保険があります。長女の学費用に取っておいた保険をここで解約するわけです。
生命保険は解約時期によって返戻額が異なりますが、相談文には払い込み済みの生命保険(2本)の解約返戻金が659万円、560万円と記載があります。Kさんはこれらとは別に養老保険と死亡保険にも加入しています。計4本の生命保険を全て解約し、解約返戻金として計1800万円を得ることにします。
そうすると、Kさんが64歳時点の貯蓄は3133万円です。一般的な老後資金の目安は2000万円なので、これだけあれば夫婦の家計は安泰なように思えますが、お二人の事情はちょっと異なるようです。
その説明を兼ねて、Kさんが仕事を引退する65歳以降の家計収支を見てみます。Kさんの公的年金は200万円、手取り額を165万円とします。ご主人の収入は400万円のままなので、世帯収入は565万円です。
次男の自動車保険料支援(年28万8000円)、長男と同居する祖父への謝礼(年24万円)もここで終了することにします。生命保険料(年15万7000円)の支払いもすでに終えたため、年間支出は499万円から430万5000円に減ります。キリが悪いので431万円とします。
世帯収入565万円、支出額431万円なので年間134万円の黒字です。理論上はご主人がお仕事を引退しない限り、先述した3133万円に毎年この金額を上乗せすることができます。
ただ、油断は禁物です。ご主人が仕事を引退すると、もっと支出を減らさない限り、家計は一気にピンチに陥ります。