スシローにとって「得」とは何か
スシローが少年を訴えたという報道があってからほどなくした6月13日、筆者はITmediaビジネスオンラインで『スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由』という記事を公開した。少年を訴えることは、企業危機管理の観点から「悪手」以外の何ものでもないので、取り下げるべきだとスシローに「提言」をさせていただいた。
だが、それが「損害賠償請求、万歳派」の皆さんの琴線に触れてしまった。
ネットやSNSで「逆張り野郎!」「左翼は黙ってろ!」「中学校からやり直せ!」などとボロカスに叩かれてしまった。仕事関係で会食をしていたら、よく知らない人から「株主のためにもスシローが訴えるのは当然だろ」とお説教もいただいた。
ただ、そういう怒れる皆さんのお話を拝聴して、「誤解されているなあ」と思った。筆者が「スシローは損害賠償請求をやめるべきだ」と主張しているのは、「未来のある少年を許してやれ」的な擁護の気持ちから生まれていると思われていることだ。
筆者がこのような主張しているのは、企業危機管理を生業としている者として、シンプルに何が一番スシローにとって「得」になるかという視点に立っているからに尽きる。
先ほどの記事の中で紹介したが、スシローが少年と法廷闘争を継続すると、次のような三つのリスクがある。
(1)「スシロー低迷は迷惑動画だけが原因か」という議論が盛り上がってしまう
(2)少年側に賠償金を払わせても、「スシローは安全」というイメージが回復しない
(3)スシローが「異物混入」「食中毒」などを起こすと、これまで以上に厳しく叩かれる
実は、これは、ここ最近世の中をにぎわせている企業や有名人の騒動にも共通している普遍的なリスクだ。つまり、今回、多くの人たちが支持していた損害賠償請求を、なぜスシローが引っ込めたのかという背景を知れば、それらの企業や有名人の危機管理の何が問題かが見えてくる。順を追って解説しよう。