ビジネスの現場では、人前でハキハキと話せる「社交的な人」が有利だと思われがちです。しかし、台湾出身で、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏の世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(神崎朗子訳)によると、「内向的な人」こそ、冷静さ・思慮深さ・協調性といったビジネススキルを兼ね備えているといいます。
内向型の生まれ持った強みを肯定し、勇気づける本書には、「目からウロコの内容に感動した」「自分らしく生きていけばいいと気づけた」と日本中から絶賛の声が集まっています。
今回は、読者から寄せられた仕事や人間関係の質問に対する、チャン氏の回答を公開します。(構成/根本隼)

「つい話を盛ってしまう人」に共通する“残念すぎる心理”とは?Photo:Adobe Stock

Q. 人を惹きつける話し方を身につけたいです

読者からの質問 リーダーには、会社の理念やプロジェクトの意義などを「ストーリー」として語る能力が必要だと思います。

 しかし、内向的な人は、自分の考えを対外的に発信するのが苦手です。どうすればその能力を伸ばせるでしょうか。

ジル・チャン氏 聞き手を惹きつけ、納得させる「よいストーリー」というのは、ウソ偽りのない感情や、実際の自分の経験に基づいた「真実のストーリー」です。

 まずは、無理に面白く話そうとしたり、話を盛ったりせずに、自分の率直な想いをストレートに伝えようとすればいいと思います

 逆に、話を盛ってしまうと、その場だけは聞き手を惹きつけられるかもしれませんが、いつかメッキが剥がれて、確実に信頼を失います。「自分を実際以上によく見せたい」という残念な心理を抱えている人ほど、話をつい盛ってしまう傾向にあるものです。

聞き手が「自分ごと」にできる話を意識する

チャン氏 その上で、ストーリーテラーとして重要なのは、聞き手が「自分ごと」として共感できるような内容や話し方を意識することだと私は考えています。

 これは、実は内向型の人が伸ばしやすいスキルです。というのも、内向型の人ほど、相手の心情を思いやる能力に秀でていて、自然と聞き手の立場を考えて話すことができるからです。

 人前で喋る前に、チームメンバーやクライアントの立場になって、どんなストーリーなら共感してもらえるかどんな話し方なら興味を持ってもらえるかどんなプレゼンなら相手の心に刺さるかを、じっくり考えてみましょう。それが、優れたストーリーテラーになるための出発点になると思います。