子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
親の問いが、子どもの思考力を鍛えていく
前回の記事で、優秀な子どもたちが身につけている”3つの柱”と、その1つ目「よい習慣」についてご紹介しましたが、今回は2つ目「思考力」についてお伝えします。
21世紀は「答えのない時代」と言われます。「人間がこなせる仕事の多くはロボットやAI(人工知能)が担うようになる」と多くの人が言っているように、この流れは加速していくでしょう。
しかし、経済状況や産業が大きく変化していく中でも決して悲観せず、むしろ新たなチャンスを見出し、仕事を生みだしていく、そんな発想を可能にするために、自分の頭で考えられる思考力が欠かせないのです。
判断に迷った時に、「他のみんなと同じ」「誰かがこんなことを言っていたから」と決めるのではなく、既存の枠組みにとらわれず、自由にアイデアを発想していく───情報が多く、バイアス(思い込み)の多い世の中であるからこそ、必須の能力です。
トップエリートと呼ばれる人たちは、勉強ができるだけの優等生で終わらず、ビジネスの領域でもきちんと結果を出すことができますが、それは思考力のたまものなのです。
この思考力は、子どもが勝手に身につけていくものではなく、家庭で育てられていきます。
特に重要なのが親子間で交わされるコミュニケーションで、優秀な子どもの育つ家庭では様々な「問い」が投げかけられ、子どもは小さな時から自分で考えるクセを持っているのです。
・選択の際には、論理的に理由を考えさせる
・一つの角度からではなく、多面的な立場から物事を考えさせる
・「わからないこと」を明確にして、追求させる
・自分の本心と向き合って選択をさせる
といった訓練をしていくことで、自分の意見を持つ力、分析する力、発想する力、問題を解決する力がついていきます。賢い親たちは、子どもの発想を刺激する質問をして子どもが楽しんで考えられるように仕向けているのです。
さらにコミュニケーションだけでなく、「読書」などを通して身につく「読解力」「言語力」「書く力」や「知識」などにより、考える力はさらに洗練されていきます。
その結果、「テレビやネットでこう言っているから」「権威のある人がそう言っているから」などではなく、事実や根拠に基づいて、自分の明確な意思で物事を決め、常識の枠にとらわれず自由に発想していきます。
また、小さな我(見栄やプライド)にこだわることなく、人と協力してよりよいものを作り出す、ということができるのです。
重要な選択を後悔しないために
何よりも、なぜ思考力が重要なのかといえば、人生を後悔しないためです。
人生には重要な選択をしなければならない場面がたびたび訪れます。
たとえば子どもが進学先を決める時に、「仲のいい友だちが行くから」「偏差値が合格圏内だから」「家の近くだから」といった安易な理由で決めるのではなく、「本当にその学校で学びたいのか?」「自分の特性を伸ばしてくれる最適な環境はどこか?」と、選択の質を高めてゆくためには思考力が必要になります。当然、仕事を選ぶ時も同じです。
人生に起きるすべてのことは、自分の責任で決めていくもの。しかし、思考を放棄して他人まかせにす「あのときああしておけば……」るとという後悔が残り、他人に責任転嫁をしてしまうこともあるでしょう。
そもそも人生に「これをしたら100点である」という明確な答えはありません。
ですから、「自分が納得できる解を出す」訓練をすることが自分らしい人生を送るための方法です。
そのためには、親が自身のバイアスに打ち勝ち、情報にふりまわされず、「こういう子どもに育てる」という信念を持って子どもと接していかねばなりません。
そして、「自分の人生は自分で決めていいのだ」と子どもに繰り返し伝え、「何が起きてもあなたの味方だよ」「あなたを守るよ」と言葉と態度で伝える必要があります。
その親のゆるぎない態度、ありのままの子どもを受け入れるという姿勢が、子どもを安心させ、「自分は自分らしくいればいい」という自信につながっていくのです。
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)