政権を担当していると、どんなに世論の反発を受けてでも、中・長期的な国益を守らなければならないシーンも出てくる。また同時に、政策効果がない、もしくは薄いものについては、これまた世論の強い要望があっても最小限に抑えなくてはならない。
議会制民主主義の日本においては、腐敗した政権与党議員との交渉・兼ね合いから、政策効果が弱いバラマキについて多少の譲歩は認めざるを得ないのかもしれない。しかし、世論の反発や要望は受け止めつつも、やらなければならないこと、そして決してやってはいけないことがある。これらの分野をどう差配するかで、政権担当能力が問われるのである。
「異次元の少子化対策」こそ
やってはいけない政策だ
岸田政権の最重要政策である「異次元の少子化対策」の中身は、その「決してやってはいけないこと」である。日本の少子化は、未婚率の上昇と晩婚化でおおよそ説明ができるということは、データからも識者の発言からも明らかになっている(詳細は『「異次元の少子化対策」が逆に少子化を進める理由、フィンランドの失敗に学べ』をご覧いただきたい)。
つまり、子どもを産んだ後の「子育て支援」をいくら頑張ったところで改善には寄与しない。岸田政権がお手本にするスウェーデンも少子化が進み、このままでは過去最悪の数値を突破しそうな勢いだ。
例えるなら、自宅のドアを開けられずに苦しんでいる人に、自宅の子ども部屋のリフォーム代金を渡す政策を莫大な予算で実施しているのが岸田政権なのである。Jリーグが、試合観戦やイベントで子ども連れ客を優先する取り組みを各クラブに推奨するようになったことを成果として、小倉将信少子化担当相などは誇らしげに語るが、それで出生率が上がることはないのである。
この効果のない「異次元の少子化対策」で莫大な税金を失う一方で、「サラリーマン増税はしない」という。だが、内閣府の試算によれば、2025年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が1.3兆円の赤字になるという。そうである以上、岸田政権は赤字国債か、増税(国民負担増)で乗り切ることになる。
岸田政権の実態は、効果のない莫大なバラマキを続ける「人気取り(ポピュラリズム)政権」である。ポピュラリズムとは、ポピュリズムの悪い方の極致で、国益を忘れて人気取りに走る政治のことだ。そうした実態が、岸田首相の人柄もあって、隠されているだけだ。