今なお抜けきらない国有体質
湖北省出身のDさんは、26年間勤務した国有通信企業E社を数年前に辞職した。E社は国家が単独出資し、今年の「フォーチュン・グローバル500」にもランク入りする中央直轄企業(国有企業のうち中央政府の管理監督を受ける企業)だ。
「日がな一日、何もしないでいい。その席にいればそれでいい。不在にしていても問題ない。その日何をしたか、仕事をよくやったかなんてどうでもいい。国有企業とは経営者不在の非常に特殊な世界です」
Dさんの発言からは、何十年を経ても抜けきらない「根強い国有体質」がうかがえる。
日本の消費財メーカーに勤務する上海出身のFさんは、中国の中央直轄企業をパートナーにして販路開拓を行っているが、日々の連絡業務に疲労しこう嘆く。
「中央直轄企業は縁故で入社する若者が非常に多いのです。彼らは学生時代に宿題をお金で解決してきた人たちでもあり、また就職活動すら経験したこともありません。決して『仕事ができる人材』ではないのです」
景気が回復しない中国では今、就活をする若者たちの間で国有企業が大人気だが、「これではますます縁故入社が増えてしまう」とFさんは懸念する。
一方で国有企業は、博士号を持つ留学帰りや技術を持つ優れた人材に対して、大枚をはたいての獲得に余念がない。かたや非効率な側面を抱え、かたや“超絶”な側面をも兼ね備えるところに、国有企業の捉えどころのなさが見える。
ちなみに、2022年の中央直轄企業(同年末で98社が存在する)の売上高は累計39.4兆元(約788兆円)で8.3%増となり、負債比率は64.8%で「65%以下に抑える」という目標値を達成した。