まず子どもに解説してもらう「意味」とは?
いわゆる「旅人算」の基本の問題ですが、この問題を、ある子どもが学習塾で習って、帰宅したとしましょう。そして、帰宅後の家庭学習で、親御さんが「お子さんに口頭で解説してもらう」のです。例えば、次のような会話が考えられます。
子:うん。追いかける問題だから、85-60=25でしょ。1km=1000mだから、1000を25で割って、(1000÷25=)40。だから、答えは40分後。簡単だよ。
親:答えは合っているね。でも、どうして「85-60=25」の計算をしたの?
子:だって、塾の先生が、「追いかける問題は、速さを引けばいい」って言ってたんだもん。
親:じゃあ、どうして「追いかける問題は、速さを引けばいい」の?
子:えっ…。わからないよ。そういう決まりじゃないの?
ここまでの会話から、子どもは「解法の暗記」はできていても、「本当の意味で、解法を論理的に理解できていない」ことがわかります(この状態が、「論理的思考力の差」を生む原因だと考えています)。このような場合は、子どもが論理的に理解できるよう、例えば、次のように解説するとよいでしょう。
子:えっと、姉は分速85mで、妹は分速60mだから、1分に(85-60=)25mずつ近づくよ。
親:そうだね。はじめ、姉妹は1km(=1000m)離れていたんだよね。それが、1分に25mずつ近づくのだから、何分後に追いつくか、どう計算すればいいかな?
子:1000m離れていたのが、1分に25mずつ近づくから、(1000÷25=)40分後に追いつくんだね。ああ、速さを引くのはそういう意味だったんだ!
この会話で、親は子に、論理的な意味での解説を行ないました。実際は、この後、「子どもに通しで再度、解説してもらう」と、論理的に理解できているかどうか確認できます。
このように、「子に解説してもらう→親がレビューする→子に解説してもらう→…」ということを繰り返せば、子どもの論理的思考力は少しずつ鍛えられていきます。
「おみやげ算で計算できる理由の説明」も論理的思考力が必要
ところで、この記事の前半で言及した「おみやげ算で計算できる理由の説明(小学生向け)」について、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』の巻末に、長方形の面積図を使った方法を掲載しています。
長方形の面積図を使う方法を説明する際にも、「AだからB、BだからC、Cだから…」のように考える、論理的思考力が必要です。ただ計算の仕方を知るだけでなく、「理由」を理解したうえで計算できるようになることが大事です。本書に取り組むにあたって、お子さんが「計算できる理由」を自ら説明できるようになれば、計算についてより深く理解できるのはもちろん、論理的思考力を鍛えられます。興味のある方は参照していただければと思います。